第3話 別れ……そして、出逢い
前の日曜日に、やっと小悪魔的な彼女とは おさらばした。
スリリングな付き合いが好きな彼女には全く打撃は無かったろうと思う。
「失恋」をツマミに夜のバーで大騒ぎしたかも知れないが、
それも彼女の演出に過ぎない。
そうして、彼女は新たな出逢いを待っているだけだ。
とにかく その彼女と付き合っていたのは俺だけでは無いと確信している。
デートの最中でもメールを頻繁にして、
ある日曜日には彼女はトイレに行くと言って席を立ったが…
「これはもしやダブルデートとか?」
と疑った俺は、イケナイと思いながらも、
しばらくトイレの脇で耳を澄ましていると…
トイレの中で喘ぎ声をあげて誰かと いたしている彼女の声……。そして絶頂を迎えると…
その後 周りの様子を伺いながらコソコソと男と出て来た所を目撃してしまった。
これには…随分 落胆したものだ。
そんなこんなで、晴れて自由になったのだから…俺にとって これほど喜ばしい事は無い。
寂しいかって?
そんな事を言っていても、俺は暫くすると…
また新たな出逢いをするに決まっている。
それが因縁なのか、病気なのかと聞かれたら、
両方なのだと思う…。
…………………………………………………………………………
今日は晴れ晴れとした気持ちで、新緑の箱根をドライブしている。
んっ?
どこかの女性の車が…
エン故したらしく、
路肩に車を停めてボンネットを覗き込んでいる。
どうも少しは車に詳しいらしい。
全くの車音痴ならエン故してもボンネットも開けずにJAFに電話するだろうからね。
「お嬢さん…どうしましたか?」
俺は振り向いた女性が
若くて綺麗で可愛い事に驚いた。
神様はやはり意地悪だ。
「どうもオーバーヒートしちゃったみたいです。」
可愛い☆……少しハニカむ仕草が堪らない。
俺の病状は…
【美人に弱い症候群】らしい。
「そうですか… 。
麓のスタンドまで送りましょうか?」
俺は携帯電話全盛の時代に逆行する言葉を発していた。
JAFを呼べば良い話だし…
通りすがりの男の車に乗る無用心な女性が現代に居るとも思えない。
なので次の彼女の言葉を疑った。
「じゃあ…すみません、お願いします。」
そう言う彼女の言葉に少し焦ってしまった。
案の定スタンドに付くと彼女は
「すみません。お手洗い貸してください。」
と言ってスタンドの建物の中に入って行った。
たぶん…そうだろうと俺も思っていた。
トイレから出た その彼女はスタンドマンに
「実は車がエン故してしまって…」
と事情を説明した。
「それならJAFに連絡したほうが良く無いですか?
いや、出来る事はさせて貰いますけどね。」
とスタンドマンは妥当な返事をした。
そして親切に女性を乗せてきた俺をいぶかしげに見た。
「サクラちゃん!」
俺はさも知り合いの振りをして架空の名前で彼女を呼んだ。
「なあに?」
彼女も少し驚いたようだが…
微笑んだ彼女は可愛い☆
惚れたみたいだ☆
俺としたことが年甲斐も無く。
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