第17章「罪の罰」その16


書いた後、二枚の入部届けを先生に渡した。


「OK、確かに受け取った。にしても、羽塚、大丈夫なの?」


「えっ、何でですか?」


「だって君以外、全員女子でしょ」


「羽塚くんはモテるんで大丈夫ですよ」


意外なことに西山が僕をからかってきた。


「へぇ、意外だなぁ」


失礼な先生だな。


「お前ら、もう坊主するか?」


右斜めから山寺の声が聞こえてきた。


そこを見ると、昨日のサッカー部三人がまた怒られていた。


しかもまだ黒に染め直していないようだ。


「あの三人、昨日も怒られたのよ。おかげで職員室の空気が悪くて、悪くて」


確かに辺りを見渡しても、この空気のせいで雑談をする先生は一人もいない。


かわいそうだと思った。


先生方にではなく、彼ら三人に。


しかし彼らは罪を犯した、その罰は当然受けなければならない。



罪とは幸せな人間が犯すものじゃない、たいていは世の中に不満を持った不幸な人がする行為だ。


ならこんな場で怒鳴どなるよりも、その不幸をなぐさめる方が彼らも校則を破る真似なんてしないんじゃないか。


職員室を去りながら、しつけと怒りを混同した山寺に僕はそう言いたくなった。




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