第17章「罪の罰」その15


職員室に入って、二人で「失礼します!」とかけ声のように同時に言った。


矢崎先生を探したが、席を知らないのですぐには見つけられない。


すると西山が僕の袖を引っ張って、


「羽塚くん、あそこ、あそこ」


耳元でささやいた。


ああ、良い匂いがする。


ダメだ、冷静にならないと。


西山の目線の先には、ポットのお湯をマイコップに入れている矢崎先生がいた。


僕らは早足で矢崎先生のもとに行った。


「ん、どうしたの?」


今年この学校に入った英語教師の彼女には山寺や小寺のような貫禄は無く、


見た目の可愛さと英語の発音の良さが相まって、生徒の人気を博している。


年齢は教えてくれないが、おそらく二十代後半くらいだろう。


「実は…」


要件を言おうとしたが、僕は東海あずみにある事を聞くのを忘れていたことに気づいた。


そういえば、あの部活、名前あったけ?


「僕ら、矢崎先生が顧問している部活に入りたくて」


「あー、東海あずみが作った部活ね」


矢崎先生は自分の席に戻って、僕らもついていった。


「えっと、どこだったけな~」


自分の引き出しから入部届けを出して、僕らに渡した。


書くものが無いと思い、西山を見るとポケットから二本のボールペンを取り出して、僕に渡した。


「さすが西山さんだね」


僕が言おうとした台詞を矢崎先生がかぶせてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る