第18章「迫り来る選択」その1


「…」


「…」


「…」


「暇だなぁ」


窓越しに見た木々の葉が落ち始めて、がらにもなく秋のわびしさを感じる。


グランドからは野球部のかけ声、体育館からはバレー部のスパイク音が聞こえる。


僕は今、部室にいる。


とりあえず、西山が持ってきた四人分のコップに西山が持ってきたポットのお湯を入れて、


西山が持ってきた紅茶のパックを入れて、秘書みたいなことをしてみた。


しばらくして紅茶の色見が付いてきたので、パックを捨てて、それを僕の向かいに座っている平木、


横に座っている西山、斜めにいる東海あずみに渡した。


「…」


「…」


「ありがとう、羽塚くん」


携帯をいじっていた西山はお礼を言ってくれたが、その他の二人は紅茶にも僕にも見向きもしない。


まあ、紅茶を飲むかどうか聞かなかった僕の方が悪いか。


平木は相変わらず読書、東海あずみはトランプタワーをしている。


初めは僕だけが異性ということで、少し緊張していたがここまで三人が自分の時間に浸っていると、


やっぱり僕はライトノベルの主人公みたいにはなれないのだなぁと自分のふがいなさに同情してしまった。


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