第18章「迫り来る選択」その2


しかも、主人公みたいに授業時間をスキップ出来るわけではない。


「羽塚くん、そんなに暇なら、生徒会に直談判して部費を要求してきて」


平木がまた僕を追い込みをかけてきた。


「そういう役目は西山の方が適任だと思うぞ」


西山に上手くらした辺り、僕もだいぶ成長したな(まあ最低だけど)。


開けた窓から風が入ってきて、三段あたりまでそびえ立つトランプタワーが崩れた。


東海あずみは叫びながら分かりやすく落ち込んだが、誰もそれに反応したりはしない。


十月の中旬に入って、少し肌寒く感じた。


「そういえば、もうすぐテストだね」


西山が一週間後の中間テストの話を持ちだした。


東海あずみ、勉強しろよ」


「言われなくてもちゃんとしていますよ」


「羽塚くん、何か勘違いしているようだけど、彼女は学年一位よ」


「えっ、こいつが?」


普通に考えればもの凄く失礼な発言だが、普段のこの少女の言動や行動を見ていれば、


この発言をしてもおかしくないと善良な読者の方なら思っていただけるに違いない。


「勉強は少し得意なのです」


東海あずみは誇らしげに言うでもなく、謙遜にしては腹の立つ順位であることを自覚していないようだった。


「ちなみに平木は?」


「二位よ」


その時、僕はようやく平木が東海あずみを目の敵にしている理由が分かった。


平木は確か入試の時に一位だったらしいから、そのまま学年トップを走り続けると思っていたに違いない。


しかししくも一位を取り続けているのはあの電波少女、東海子月あずみねづきだったわけか。


「西山は?」


「六位くらいだったかな…。二人には敵わないや、ハハッ」


いや六位なら誇れよ、確かこの学年は三百人弱いたはずだ。


僕なんてまだ五十番以内に入ったことがないぞ。


つまりこの部室には僕以外、頭の良い人間しかいないのか。


僕だけが圧倒的に負けていることもショックだったが、


何よりも女子に負けているのが悔しかった(今更な話だが)。



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