第17章「罪の罰」その11


「西山」


さっき集めた数学Iの宿題を古寺先生の所まで持って行こうとする彼女を止めた。


「どうしたの?」


教卓には新田がまさに今、行こうとしていたので少し不機嫌そうな顔をしていた。


「いやまた今度でいいよ、新田、待ってるみたいだし」


ここは新田の顔を立ててやろう、あいつを敵に回すとクラスの女子にどう思われるか分からないからなぁ。


「あ~、そうだね…、新田くん、悪いけど、この宿題持って行ってくれない?」


「えっ、この量を一人はきついよ…」


「何言ってるの、男でしょ」


「わかったよ」


「さすが、新田君は優しいね!」


西山のいいように言いくるめられた新田は明らかなため息をついて、その整った顔立ちが妙にしぶくなった。


吹奏楽部の貴公子プリンスの異名を持つのに。


おそらく彼は女子に好かれるだろうけど、尻に敷かれるタイプなのかもしれない。


教室を出た新田を見送って、西山は窓からグランドを見ていた。


「それで?」


西山の顔は整っていることは知っていたけど、横顔は絵になるくらい綺麗だった。


「ああ、それよりいいのか?無理やり押し付けて」


「羽塚くんって、やけに優しいよね。新田くんと仲良かった?」


「いや、そうじゃないけど…かわいそうかなぁって」


「私にとっては新田くんと宿題を持っていくことなんてどうでもいいことなの」


さらっとひどいことを言っているけど、その気持ちはすんなりと理解できた。


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