第17章「罪の罰」その10



僕がワガママなのだろうか。


でもワガママが言えない人生に何の意味があるのだろうか。


だってそうだ。みんな、欲望のままに生きているじゃないか。


じゃなきゃ、誰も傷ついたりなんかしない。


仮に欲や煩悩ぼんのうを捨てて生きたとしても、それは人なのか。


何も求めないなんて植物と変わらないじゃないか。



次の日、学校に行っても、僕の怒りは収まらなかった。


でもこの怒りはどこに向ければいい?


不幸といわれる不幸は何一つ起きていないのに、どうして心がすさんでいるのだろう。


部活に入れば何かが変わるのだろうか。


東海あずみと平木、あの二人は合わないだろうな。


僕にとって『悩み部屋』なんてどうでもいいものだ、




心の葛藤かっとうを一つ一つ整理していく間、目に映る教室が、先生が、みんなが、授業が早送りされたように、いや止まったように流れる。


そこで僕はある生徒に気づいた、そう完ぺき美少女、西山だ。


彼女も『悩み部屋』を作り出した一人なのだ、僕も入るなら彼女も入るべきはずだ。


放課後、西山に声をかけようとしたが、気まずくてやめた。


最近、西山とあまり話していないせいで緊張して声が思うように出ない。


いや、その前に西山のところに向かうことさえ、ためらわれる。


劣等感だろうか、それとも女性を意識しすぎているだけなのだろうか。



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