第17章「罪の罰」その12


「それなら羽塚くんと話している方がよっぽど何かが変わると思う」


褒められているのか、よくわからなかった。


「西山、お前って部活入っていたっけ?」


本題に戻った。


「ん?入ってないよ」


「部活に入ってみないか?」


「えっ、どんな部活?」


そういえば、あの部活って何やっているんだろうな。


『悩み部屋』について何か調べることなんてできるのか。


「あ~、実は僕もわからないんだ」



西山も何かは察しているんだろう。


「とりあえず来てくれないか?」


「うん、わかった」


思いのほか、即答だったのでびっくりした。


そして僕らは教室を出て、廊下を歩いた。


美少女と二人で歩くのはいつになっても緊張する。


「ねぇ、羽塚くん」


「ん、何?」


「ちょっと、自分語りしていい?」


春学期に比べて、彼女の顔が上の空に見える。


「ああ、いいよ」


「昔は自分が無敵に思えていたんだ。


何でも卒なくこなして、みんながイエスマンで、その高揚感とか優越感とかに浸っていた。


でも最近は私を中心に回らなくなっていってることに気づいたの。


だんだんと現実が私の背中を追ってくる、それがとてつもなく怖い」


ああ、こんな可愛い子でさえ現実に苦しんでいるのか。


「でも今の西山はカッコいいと思う。そうやって弱さをさらけ出せるのは誰にでもできることじゃない」


にやけたような笑顔でこう言った。


「それは羽塚くんだからだよ」


その可愛い顔がさらに可愛くなった。




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