第13章「空いた学び」その3


およそ三十分、窓の外を目的や意思もなくただ眺めていると


時計の秒針が十時の所にいった時点で一限終了のチャイムが鳴った。




学校の時計なんて止まらない限り、新品に取り替えることなんてないだろうから、


数秒数分のズレを気にする人間はそういないんだろう。




手についたチョークを教卓の上で掃った関原先生は、


その迷惑行為に気づくこともないまま教室を去っていくと思ったが、


さも当然のように夏休みの宿題を回収するように求めた。


筆記用具、教科書、ノート、すべて直したのに。




ため息をつきながら、僕は前の座席の人に一昨日仕上げたばかりの宿題プリントを渡した。


弁当なら注文された直前に作って、出来立てホヤホヤで提供したほうがいいのに、


宿題は直前にやったことがばれると、


自力でやってないと見なされ、怒られる可能性が高い。




世の中いろんな人がいるわけで、


早くやろうが遅くやろうが期限さえ守れば、


課題の内容を評価すべきだと思う。


小学校の時にクラスの女の子がみんなよりも、


早く宿題を提出して褒められていたことをふと思い出した。




まあそんな意見を持つ僕は、半分近くは答えを写したので


自分の意見を正当化できる立場にはないのだが。

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