第12章「冷めた花火」その12



八月二十日、セミの鳴き声と猛暑が衰え始めてきた頃、


僕は自室で宿題を進めていた。


夏休みも残り二週間を切り、


僕は今までため込んでいた課題の代価をこの三日間、


徹夜によって払わされていた。



しかしその甲斐もあってか、半分近い量の課題を片付けることができた。


睡魔と達成感に溢れた僕の脳はアドレナリンが放出していたらしい。


このまま全ての宿題を終わらせることを決意した。


しかし八割方終わったところで、集中という糸がブチブチと切れ始めた。


ペンを動かそうにも脳が命令できなかった。



これは気合や根性でどうにかなる問題じゃない。


あともう少しと分かると手を抜く、僕の悪い癖だ。


三日ぶりにたっぷり寝ようか迷ったが、残り10日の夏休み。


できることなら、有意義に使いたい。



学校の宿題なんかじゃなく、僕の悩みを解く、そんな場所が。


あるわけないか。


僕は悩み部屋なんて作れない。


あれを作り出せるのは、おそらく綺麗で可愛くて、哀れな女の子だけだ。


女の子か...美術室に行こうと思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る