第12章「冷めた花火」その8
一緒にいたいとは思う。
平木に出会ってから平平凡凡な毎日が変わっていったことは確かだし、
一緒に学校に帰ること、休み時間に話すこと、右隣にいること、
僕のめざましい時間のほとんどに彼女がいる。
でも、それが「好き」という感情だとは断言できない。
なぜなら僕らは「悩み部屋」を通じて、
互いの仲を深めるきっかけを作ることができたからだ。
それはつり橋効果みたいなただの思い込みかもしれないし、
平木と一緒にいたいのは、単に憧れが尊敬に起因するものかもしれない。
僕は平木に変な妄想なんかしないし、セックスがしたいとも思わない。
健全な男子高校生が好きな女の子に性欲を抱かないなんて異常だろう。
つまり、僕は平木のことが好きだとは断定できないということだ。
「じゃあ、世界の秘密を知るために、私と一緒に死んでくれる?」
花火が上がっていたが、平木の言葉はその音をかき消すくらい鮮明に聞こえる。
「何だよ、世界の秘密って」
「何でもないわ。行きましょう」
何にもないわけがない。
君が見せたその顔は何よりも真剣でまっすぐだったじゃないか。
でも、聞けない。言葉がのどにつっかえる。
それ以上聞けば、恐ろしい何かに巻き込まれそうだと思ったからだ。
―大勢の人や屋台、空高く散る花火、そして夏の匂い―。
ここがいい、僕はこんな平和でくだらない場所で君といたいんだ。
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