第12章「冷めた花火」その7
じゃあ、平木はどう思っているんだろう?
この光景に違和感を覚えないんだろうか?
もしそうなら、僕を恋人として見てくれているんだろうか?
それとも、ただ感謝の印として側にいてくれているだけだけなのか?
平木が柄にもなくわたあめを買っている時、上空からドーンと轟音がこだました。
「花火、上がってきた」
「…」
「綺麗だなぁ」
「…」
僕の言葉が誰にもかまわれずに宙に舞っている。
平木の相槌は、絶滅危惧種のようにめったに現れない。
「平木とここに来れてよかったよ」
「…」
反応してくれないことに腹が立ったのか、
ずいぶん大胆なことをいってしまった。
なんだか、まずいような気がした。
僕が平木のことを好きだと勘違いされても、おかしくない言葉じゃないか。
彼女はこちらを見る気配がない。きっと確信されたんだろう。
しかし仮に平木のことが好きなら、別に好きだと思われてもいいじゃないか。
でも、僕は平木に好きだと思われることは何か嫌だ。
不快感はないが、心臓がズキズキする。
ってことは、僕は平木のことが好きじゃないのか。
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