第12章「冷めた花火」その6
「まだ花火まで時間なりそうだから、屋台でも回るか」
「そうね」
それから、大勢の人をかき分けながら、
射的や金魚すくい、輪投げ、色んな屋台を回った。
平木はいつもの教室の姿からは想像できないほど、積極的に遊戯を楽しんでいた。
「まさかここまで、楽しんでくれるとはなぁ」
あまりに意外だったので、つい口にしてしまった。
すると、彼女はわたあめの屋台をじーっと見つめた。
「初めてきたの、祭り」
「人ゴミが苦手だし、母が厳しかったから、幼少期のころは家と学校の往復だったわ。
だからといって、同級生を見て特別羨ましいとは思わなかった。
遊びや慣れ合いは人生を切り開いていく上では必要ないはずだから。
でも彼らが楽しいそうだったことは、今でもまぶたの裏に焼きついている。
こうして羽塚くんと祭りに来て、同級生の気持ちがすこしだけわかった」
平木は長い語りの後、わたあめの屋台に向かった。
もっと見たい、この女の子の表情を。
笑った顔、怒った顔、悲しい顔、驚いた顔、
色んな顔を、気持ちを知りたい。
自分でも引いてる。変態なのかもしれない。
でも心の底から湧きでたこれが僕の正直な気持ちなのだとしたら、
もう誰にも止めることは出来ないんじゃないか?
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