第12章「冷めた花火」その4



いつの間にか、平木は僕の横を歩いていた。



「何か久しぶりな気がするな」


平木は巾着を前に手を組んで歩いている。



「ええ。もうお盆だもの」



もうお盆なのか。


そうだ、僕は本命の八月二日の都内で開催される花火大会に誘えなかった。


その花火大会は三万発打ち上げられ、一万人以上参加する大型の祭りだ。


しかし、今僕らが来ているのは二千発で、


参加数五百人程度の田舎で行われるような祭りだ。



「宿題は終わったの?」


「いや、まだ半分くらい」


「半分?今まで何をやっていたの?」


「僕だってやることがあるんだよ」


どうしてか、つっけんどんな言い方になってしまった。


平木は少し驚いたようで、その大きな目を見開き、黙ってしまった。


謝るべきなのか?


でも、彼女は気にしていないかもしれない。


でも、隠しているだけかもしれない。



「ごめん」



「何が?」



「いや、きつい言い方をして」



「ふっ」



平木は何を言っているんだと言わんばかりに笑って見せた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る