第11章「確かな憩い」その15


小嶋は手に持った小さなボトルを上に傾け、


首からゴクゴクと言わせながら豪快に飲んでいる。


女の子の飲む姿をまじまじと見るのは初めてだった。



「期待してるよ、羽塚くん」



そう言って、陸上のいるグランドの中央へ戻っていった。


不覚にも走って戻る彼女の鍛え上げられた足をまたも見てしまった。


おそらく平木がこの場にいたなら、当分は変態の汚名を着さされた上、


二週間くらい口を聞いてもらえないだろうな。


帰り際、一昨日寝ている時に蹴飛ばされた妹の足を思い出した。


同時にあの足には一切の性的な興奮や魅力も感じなかったことも思い出した。



家路についた僕は、汗まみれの制服から着替えてソファに横になった。


天井を見ながら、あの言葉が頭の中をかけめぐる。


僕が特別?


それは西山にとって?


それとも僕そのものが特別なのか?


わからない、小嶋という少女の真意も意図も。


西山に一応、報告しておくか?


いや、今の彼女を混乱させるのは避けたいな。


取りだした携帯をポケットになおして、まぶたを軽く閉じた。

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