第9章「集わぬ参加者」その9


平木と話をしたかった。


教室の扉を開けると、もう半分くらいは終わっているようだった。


平木は相変わらず、たくさんの人に囲まれている。




「平木、先生が呼んでいるよ」



この状況で話しかけるのは億劫だったが、気をつかうのも何だか癪だった。



「わかった」



そう言って、長い黒髪をなびかせながら、教室を去っていった。


みんな、彼女について、楽しそうに話している。


何だか最初に平木が僕にした仕打ちを話してやろうかと思った。



馬鹿だな、僕は。


彼女には、僕の右隣の他にも居場所があって、あれほどの容姿と才能があれば、


そりゃどんなコミュニティでもやっていけるのだ。


それが当たり前で、平平凡凡たることなんだ。


無意識のうちに平木に貸しがあると思っているのかもしれない。


心のどこかで見下していたのかもしれない、彼女にはコミュ力がないと。


でも、それは僕なんだ。


自分にコミュ力がないから、それを憧れている平木に映し出して、


自分の欠点を平木のものと思い込んでいたんだと思う。



「羽塚、ちょっといいか?」



昨日と同様、やることもないまま、


みんなが頑張っているのをばれないように見ていると、誰かが話しかけてきた。


振り向くと、小西だった。


こいつはサッカー部所属で、かつて、平木に日直の仕事を押し付けたクズ野郎だ。


特に仲がいいわけじゃないが、こいつだけは自分より下であると認識してしまう。



「お前、西山のこと狙ってるのか?」


最近は驚くことばかりだったが、これほどの衝撃は初めてだ。


一瞬、小西と目を合わせることができなかった。

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