第9章「集わぬ参加者」その10
「何で?」
口調だけは冷静を装った。
「いや、お前が西山とLINEしてるって聞いたから」
ハァ、そういうことか。
やはり、あれだけの人気者だと、
他人とのプライバシーの境界線もかなり薄くなってしまうんだな。
いや、今はばれたことを嘆くよりも、
こいつとの会話をどう終わらすを考える必要がある。
要するに、小西は納得していないのだ。
僕が分不相応にも西山を狙っていることに。
まぁ、全くの誤解であり、勘違いにもはなはだしいが。
「僕が西山を狙って、付き合えるわけないだろ」
当たり前で、平平凡凡たることを言った。
獲物を狙っている者には、その獲物を狙う度胸も気概もないことを示せばいい。
「そうだよな。悪い、ちょっと気になったもんだから」
そう言って、小西は同じサッカー部がいるグループのところに戻った。
正直、お前が西山と釣り合う可能性も皆無だぞ、と言ってやりたかったが、
話がややこしくなりそうなので、頭の中だけにしておいた。
…僕が西山とは釣り合わないか。
分かっていることを口にするのは、何だか嫌だな。
きっと自分は学校の中じゃ中の下くらいの存在で、
これからもあんな奴に馬鹿にされて生きていかなきゃいけない。
学校に行って、勉強して、家帰って、飯食って、寝て、学校に行く。
そんな毎日なら抜け出せずにいる。
特別なことはすぐそこにあったのに、僕はまだ唇を噛んで、眺めているだけだ。
へばりついた絶望が心に風穴を開けたように虚しさを感じさせる。
「男子、ふざけないで、ちゃんとやってよ」
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