第9章「集わぬ参加者」その4


「みんなの知っているとおり、本番にむけて、後はリハーサルと準備だけなの。


それでリハーサルは明日の授業時間を使ってやるから問題ないの。


でも、実は準備が…教師、学級委員、体育委員でやる予定だったんだけど、


思ったよりも作業が難航して、ちょっと間に合いそうにないの」



何だか嫌な予感がする。


「そこで、学級委員会の話し合いで、


一年の一つのクラスが手伝いをすることが決まったの」



心にしこりができている。


いや、まだ信じよう。


僕の直感は当たらないはずだ。



「…で、言いづらいだけど、そのクラスがうちの三組になったの」


しーんとなった。


みんな、黙って聞いていたが、西山の最後の台詞の後、


しーんと教室の空気が無表情になったようだ。


おそらく、パニック状態で状況を理解していないのだろう。



もう数秒後に、数多の怒号が西山と新田に飛び交い、


教室の空気が怒りの表情を露わにするだろうな。


西山、君は誰であっても寛大で寛容だが、人が怒るポイントをわかっていない。


平民は自由を奪われることを最も嫌うのだ。


それに抗えば、僕たちは怒りという名の蜂起を起こす。


そう、フランスのテニスコートの誓いのように。



「まぁ、しょうがないな」


「それっていつやるの?」


「できれば、私は放課後がいいな、朝弱いし」


ワーワー、ワーワ―、ワ―ワ―…。

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