第9章「集わぬ参加者」その3


しかし、このごろは外の景色は見ていない。


そろそろ外の景色を見るのも飽きてきたところだった。


それにこないだ、英語の矢崎先生に英語で注意されたばかりだ。


だから、最近は無駄だと思った授業時間は、携帯でマンガを読んでいる。


まぁ、特に面白いと思っているわけがあるわけでもないんだが。



そのせいか、まったく話の内容が入ってこない。



親しみを感じない赤の他人と話しているような気分だ。


それか、悪いことを自覚しているからかもしれないな。



秋山先生はもう二十分近く体育祭について話している。


体育祭ごときでそんなに饒舌になれるのなら、


先週の土曜日に起きたことを説明してほしいくらいだ。



「先生、もうみんな、飽きちゃってますよ」



三十代の体育教師のようなゴリゴリのおっさん(国語教師)に、


そんな大胆な言葉を発するとは、一体誰だ。


いや、本当は分かっている。


答えは僕の平凡な土曜日を潰してくれた三組の学級委員、西山だ。


僕の目にはいつも通りの可愛らしい笑みを含んだ立ち振る舞いで、


学校生活を送っているように映る。


西山は変わることなどなく、良い子を演じているようだった。



「悪い、悪い。ついつい、暑くなってしまった。


本題は西山と新田が代わって話してくれ」



そう言い残し、秋山先生は教卓から端っこに移動した。


逆に、まだ本題に入ってなかったのか…。

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