第3章「僕たち私たち」その14


五限、六限が終わり、今日は変わり映えのない時間がみるみる経っていた。


これが僕の日常、生活、普段なのだ。


特に取り上げるところもない高校生活だ。


でもこのまま時間だけが去っていくのだけは何とかしたかった。



そうだ、僕は右隣の席の彼女に聞かなければならないことがあるんだ。



「あの…


読書に勤しむ平木は気づいていなかった。


僕の中で迷いがよぎった。


今言うべきことは一体何なのか?


考えろ、問題の根本を。


「君の悩みは解決したのか?」


平木は大きな目をさらに見開いて、僕の顔を見ている。


答えが聞ける…そう思った刹那、


「はい、みんな席に座って~」



ホームルームが始まった。


ハァ、今日はなにかと会話を遮られる。


平木は僕の方に向けていた顔を正面に戻し、


また読書に打ち込み始めた。


この少女は気遣いというものを一切持ち合わせていないらしい。


人並みの常識と良心をもつ者ならば、ここは会釈ぐらいするのが礼儀だろう。


いや、人並みどころかミジンコ並みすら持ち合わせていないかもしれないな。


途方もない寂しさを紛らわすため、


僕は前にいる新田と西山の話を聞くことにした。


今日の昼ごろから秋山先生が出張に行ったらしく、


今日明日は委員長二人の独壇場というわけだ。

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