第3章「僕たち私たち」その9
まぁ、クラスメイトといえ、一昨日会った奴に
自分の悩みを知られたことはあまり気持ちのいいものではないはずだ。
平木は使い古されていない綺麗な鞄からを本を取りだし、読書を始めた。
カバーを付けていて、どんな内容の本かは分からないが、
本の厚みから見て、僕がそれを理解するにはもう少し教養と知性が必要であろう。
その時、僕はふと思った。
難しい問題を抱えている人は、難しいことを好むなのではないか、と。
いや、難しいことを好むからこそ、難しい問題に直面するのか。
どっちにしろ、難しいことが必ずしも素晴らしいことではないと
この3日間で痛感した。
僕はホームルームまで残り10分近くあるこの時間を潰す方法が分からなかった。
しかし、現実ってのは厳しいものだ。
都合の悪い不都合がはびこりすぎている。
このままこの沈黙を頑なに守り続けることはすこし気に食わなかった僕は、
読書に集中している平木に声をかけようとした。
「あの…」
僕の勇気が震えながら頑張っていた、その時、
「はい、ホームルーム始めるぞ~」
「起立、礼、着席」
これはもはやギャグ小説なのか、と疑いたくなるような絶妙なタイミングだった。
結局、僕の世界は昨日を境に変わることは一切なく、
どこといって特徴のない毎日が始まった。
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