第3章「僕たち私たち」その8


普段なら十五分で登校するところを今日は四十分かけて登校した。


八時十分だ。


教室に着くのは十五分と考えれば、妥当な時間帯だろう。


たかだか数十分早く学校に着いただけというのに、


なぜだか新鮮な気分になった。


いつもより少し早く着いた教室は、


いつもより少し人の数が少なかった。


それは僕が毎日学校へ行くことと同じくらい当然のことであり、


昨日あれだけのことがありながら、


どうやら僕が所属する1年3組の教室は何の変哲もないらしい。


昨日、僕と平木が屋上から飛び降りたことは、誰も知り得なかったようだ。


僕はみんなの視線を感じた後、自分の座席を見つめるとその横にには


僕のありきたりな日常を壊した張本人が窓の外を座っていた。


座席の方へ向かうと、平木は視線の先に僕をとらえたようで、


僕の目が合うと、視線を外して自分の鞄をあさりだした。


明らかに意図的であるような反応…。


まさか、昨日僕が怒ったことに怒っているのか?

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