第1章「平木尊」その14
6限終了のチャイムが鳴った。
ようやく終わった。
やはり高校生出来たて、いや成り立てホヤホヤの僕にとって、
6時間授業というのは、相当ハードな所業らしい。
単純に考えて、5時間近く、机に座っているんだから当然か。
僕は同じ姿勢をとっていたのを改めて直して、手を伸ばし、大きく柔軟をした。
そして束の間、ホームルームが始まり、
学級委員の西山と新田が再来月に開催される体育会について、
競技種目の確認、二週間後の中間テストの説明と諸注意を行った。
男子の学級委員新田が終わりの挨拶をして、みんな帰り支度をし始めた。
これで終わるかと思いきや、担任の秋山先生が口バサミした。
ちなみにそんな語はない。
「おいおい、そういえばうちの3組だけ
宿題が届いていないと古谷先生から連絡があったぞ。」
そういえば、数学の宿題があったのを思い出した。
確か先週の水曜日に提出だったはず、
おいおいだったら何でさっきの時間に言わないんだ。
女子の学級委員である西山はふと思い出したかのように
「あっ、そっか。忘れてた。」
「先生いわく、あれは先週の木曜日に提出だったらしいぞ。まったく、以後気をつけるように」
なぜか西山が怒られてしまった。
(曜日を間違えたことはスルーしてほしい。)
学級委員とはこういうとき、
みんなのしわ寄せを担なければならないらしい。
しかし、西山はその可愛らしい顔に似合う照れ顔で
「ごめんなさ~い。気をつけます。」
さすがだ。西山一人が悪いわけではないのに、
さも当然のように、それも美少女だけが許される特有の照れながらの謝罪というを使用するなんて。
高校に入学してまだ1カ月と少し、
怒られ慣れていない僕らにとって、彼女のような存在は憧れでもあるだろう。
その証拠に西山が話した途端、
このクラスに通っていた空気というか雰囲気が軽くなった気がする。
今のところ、男子の下衆話は西山の話で持ち切りだ。
西山はその白く、綺麗に爪を切った両の手の平をパァンと軽くたたき、
「えっと、じゃあ宿題集めようか?みんな宿題もってる?」
すると、隣の新田はまたかと呆れたように
「西山、今日の6限は数学だったろ?」
そう言うと西山はハッと驚いた様子で、
「そっか、忘れてた。それじゃあ、後ろの人から順に回していってー」
みんな帰る気満々だったのか、気だるそうに鞄から荷物を取り出して、後ろから順に回していく。
先頭に回された数冊のノートは学級委員の新田と西山が一つにまとめた。
教壇には30冊程度のノートが置かれている。
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