第1章「平木尊」その11


5限目にもなると、さすがにこの状況にも慣れ始めてきていた。


たまに横を見ることはあっても、


教壇に立つ教師の話を聞き取れるほど前に集中できた。


ちなみに今は世界史の授業だ。


担当の横山先生は、人類の祖を神々しくかつ敬うように僕らに語りかけている。


要約すると、猿人が原人になっただけなのだが、


先生は授業が開始されてから30分、どこでなにがなぜこのようなことが起きたのか、


言葉と黒板の文字だけではなく、


それこそここで踊り出すんじゃないかというくらい動いて、


体でも表現しようとしていた。


初めはクスクスいやらしく笑っていたクラスメイトも、真剣な顔で先生の話を聞いている。



横を見ると、相変わらず右隣の彼女は


教科書も開かずに受けている。


しかし、さっきまでとは違い、その綺麗な机には白いB5のノートが広げられていた。



なぜ彼女がこの授業からノートを開くようになったのか、


これにはわけがある。


先ほどの3限の時間だ。

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