第5話 ミントちゃん探し
涼しいコンビニから出たとき
近くに大きな袋を3つもかかえ、こんなに暑いのにコートを着ている女の人が座っていてよく見ると、髪の毛も何日も洗ってないように油でねっとりしている。汚れたコートの下に何枚も重ね着をしている。
ホームレスかあ。
行きましょうと、無言で雅美さんが促す。
その時、ミヤァと一匹の猫がそのホームレスに近寄っている。
まってといいながら雅美さんは、その猫に近づいていく。当然、女のホームレスにも近づく。
うっ、すごい臭い。真夏だからよけいに、すえた臭いが鼻をつく。しかし雅美さんは、表情一つ変えずに「この猫、貴方の?」
ホームレス女は、声がきこえているのか。虚ろな瞳といっても、ぼさぼさの前髪でほとんど目がふさがっている。
その間にも雅美さんは猫を観察している。
「探してた猫じゃないみたいね。ありがとう。これ、飲んでね。」と、ホームレス女の前に買ったばかりのお茶をおいていく。
すると、さっきまで動きがなかったのに、機敏にお茶をとると蓋を開け、飲み始めた。
その動きのギャップに目が離せず私は、歩きながらその姿をみていた。
「雅美さん、すっごい臭いのによく、近づけましたね。猫1匹も見逃さないって、プロ意識を感じました。」
「ふっふ私、長いこと息止めれるの。武も、言ってたけどゴミ屋敷経験したら今のは、可愛いもんよ」
へ、可愛い⁈匂いが?うっ、私にできるかしら。まだ、依頼も来てないのに不安になる。
「今日は、あと1時間周って打ち切りましょう。」
結局収穫なしで水藻に帰ると、先についていた武チームは机に広げられたサンドイッチと飲み物で、昼食にしていた。
「はあ、クーラーの部屋最高ね」雅美さんは、素早く食べ物や飲み物を口に運び、私にも、進めながら、近況報告を怠らない。
20分ぐらいたったろうか、ヒンヤリとした部屋の中ですっかり生き返った。
トゥルールルルルルルーと、角の方にある電話が鳴る。
おまえとれよというかんじで、武が顔でうながす
なによ、偉そうに。
「練習として、取ってくれる?名前と連絡先と要件をメモしてね」と、雅美さんがほろうしてくれる。
緊張するなあ。どう話せばいいの。
覚悟を決めて受話器をとる。「はい、便利屋水藻です。」
電話の声は、可愛らしさが残る小学生ぐらいの男の子だった。
電話の声が、幼いながらも切羽詰まったようにも聞こえ、必要なことを聞いていく。
話を一通り聞き、ありがとう。よく、勇気出して電話かけてくれたね。と言うと、一瞬緊張がほぐれたようにお願いしますと言う。
電話を切って雅美さんに概要を伝える。
ミントちゃんの失踪は飼い主を嫌う町内会長、上田 聡が起こした事件だった。リークしたのは、町内会長の小学生の息子だった。
雅美さんと私は早速、車に乗り込み、あらかじめ聞いていた上田さんの家に急ぐ。
近くの駐車場に止めて、家の表札をみながら探していく。
アイボリーの洒落た2階建ての家だ。門がないのは、今流行りか。
チャイムを押すと、先ほどの小学生が出てきた。声の印象通りの、素朴で内気そうな男の子だ。
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