第2話思い掛けない接近
そんな彼と私は目が合った。
その瞬間 体温が上がりドキドキと心臓の鼓動が
荒くなり
(恥ずかしい、この瞬間が早く過ぎてほしいという思いが抑えきれなくなる寸前)
「あっ!ブス」
突如放たれた
言葉に反応できず
ただ茫然と言葉を失った。
昔のあの苦い思い出がよみがえり
身を固めるしかできなかった。
その時、2つのタイプにわかれた。
目の先で、私を捉え笑いを堪えながら
困惑した表情で見つめる人
それと、
数分前と同じ表情でただ私の表情を見ている人
「な、何?」
私は、(ブス)
その言葉に動揺しうろたえていた
その様子を見かねた
担任の樫野先生が
力いっぱい(バチン)
と手を叩いて この雰囲気にピリオドを打った。
「武君、いくら興味あるからって、
女子にその言葉は禁句。」
「あん?別にねーし」
「名前は、享利 武君。空いてる席は…あっ、今宮 美門さんの前が開いてるわね。そこね」
はきはきしたしゃべり方で有無を言わせず進行していく。
彼は前の方の席に決まった。
私は、後ろの方の席にいるから
それだけがすくいだった
それはいいけど
男子の噂好きな暇人はニタニタしながら、
私に視線を向けてくる。もう最悪、他に趣味を見つけたら?
(言えないけど)
私は頭を抱え込み、赤く火照った顔をうつ伏せに隠しながら
無視を決め込む。ボソッ「何なのよ、あいつ」
(一言返せば、この先からかわれるから それだけは死んでも嫌)
「ほっ」と一息つく
(これ以上、あいつとかかわりたくない。)
ホームルームが終わり
休み時間に入ると
亨利 武の周りには女子たちの取り巻きができていた。
特別やる事の無い私は
モテる人は良いよね。程度で
彼の後ろ姿を じっと眺めていた。
「ギィーガタッ」
亨利は突然立ち上がり
「ちょっと退いてもらって良い?」
彼に群がった10人余りの女子を押し除け、自分の席から立つと 後ろのわたしの席に向かって歩いてくる。
どう行動したらいいのか、文字通り固まっていた。
近くまで来ると
「さっきから、俺のこと見てたよね、一緒に帰りたいんだろ?」と、ふいに腕をつかまれ歩いていく。
「ちょ、ちょっと、何なのよ。朝から藪から棒に、ひどい言葉浴びせて。」話が、かみ合わない。
「腕痛いし、離してよ。不愉快だわ。」
「俺、覚えていない? 昔、近所に住んでいたんだけど。」
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