最初の詩人
いち、にの、最初の詩人は、最初の主観で書いていたらしく、それは例えば、
「透明できれいなコップが、清潔そうで私は好きです。」
書くことは、つかんだ糸をはなさないように手繰りよせながら、森の中を歩いていく童話の中の子どもに似ているっていう話だった。だから書くときはトイレットペーパーがベストだと言っていた。文が途切れないからだ。だけども、ぼくが学校の便所から持ち出したトイレットペーパーをプレゼントしたときも彼の態度はそっけなくて、
「シンプルなのがいいんです。ずっと三人称だったのが、最後に一人称になるだけのお話はだめでしょうか?」
「知らない。いんじゃね?」
いち、にの、最初の詩人は、いち、にの、散歩の途中に、ごお、ろく、転んで死に、これから始まる最初の詩人。
「私は、ほとんど部屋でひとりでいます。」
「部屋で、はがしたかさぶた集めてます。」
「はみがき忘れて眠ってます。」
「字を書いてます。」
「私は手が冷たくて鉛筆の持ち方が悪いので、親指の爪が人差し指に食い込んで、目が覚めたばかりのときはよく間違えた場所にいるような気がします。」
「新しい靴をはいたときの感触は清潔そうで、私は好きです。」
「歩いていく大学にはなるべく毎日行きます。」
「詩は詩的なものとして始まったように思います。」
(私はだれでしょう?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます