第3凡「幼馴染がいる=勝ち組」
「はい、授業はこれで終了。しっかり復習しておくように!」
教師の鈴木が野太い声で号令をかけて合同授業は終了する。授業は淡々と進行し、特にこれといって何も起こらなかった。
だが、俺たちの戦いはここからである。『ヒロスク』の生徒と関わることのできる数少ないチャンス、このチャンスをものにするんだ!
「ってなんで俺の横の席の生徒が欠席なんだよ!」
教室内では向こうの女子生徒もこの機会を逃すまいと言わんばかりに男子生徒に話しかけていた。だがしかし、基本的に隣の生徒同士で談笑しており、隣の席の女の子が欠席していた俺にはその話す機会すらなかった……
「まずい……このままじゃまずいぞ……」
まるで体育の時間にペアを作れと言われて一人あぶれてしまった人の心境になった俺。とにかく名前だけでも聞かないと!
「ちょっと! あのっ!」
そう言って教室からいそいそと出て行こうとする一人の女子生徒に声をかける。言っておくが、別に俺はコミュニケーション能力が欠如している人間ではない。だから気兼ねなく声をかける。あくまで自然に、平静を装って。
「俺ッ! 圷 亜連! そっちは?」
「私? 私は
よしっ! これならいけるッ!
そう確信した矢先、
「あ!
彼女はそう言って俺のクラスメイトである木賊の名を呼んだ。それを聞いた木賊はさっきの堂々とした宣言からは想像も出来ない細々とした声で言った。
「な……なんでお前がいるんだよ……」
目を丸くして驚きを隠せないといった様子の木賊。そこには少し照れ隠しをしているようにも見えた。
俺にはこの後の展開が読めた。
――まさかのまさか。昔に出会っていた幼馴染と運命の再開ってやつな。
「木賊君こそ! なんでこんなところに!」
俺はひっそりと自分がまるで物語の背景の一部であったかのように、その場から自然にフェードアウトした。
※
「今から席替えを行う。席替えは厳正な抽選をもって行うが、皆はどの席を目指すべきか分かっているな?」
田中は俺たちに至極簡単な質問を投げかけた。メインになるための席など昔から相場が決まっている。それは……
「窓際の一番奥の席です!」
前から二列目の席に座っていた
「その通りだ! じゃあ、順番にくじをまわすぞ」
田中はそう言って俺たちに、三十本の線が描かれた紙を渡した。
「頼む! どうか俺にチャンスを!」
席替え一つでこんなにハラハラさせられるなんて小学生ぶりなんじゃないか、そんなことを考えながら俺は運命の糸のようにまっすぐ伸びた線の一つに自分の名前を書いた。
「結果は明日発表するからな。それじゃあ、教科書二十ページを開いて……」
その後は教科の授業が
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