防人娘の見る夢は〜戦後編〜

文化

　日露戦争の敗戦後、日本は米英の多大な支援を受けなんとか立ち直ったが、その代わりに米英（主に英）による内政への干渉も多くあった。

　よってこの世界の日本は前世よりも、制度や文化に至るまでこの二国の影響を多く受けており、第一次世界大戦前の一時期は米英共同統治日本列島と揶揄された事もあった程だ。

「前世の大日本帝国ももちろん米英の影響はかなり受けてたけど、この世界じゃ更にね。現行の憲法や法律とか形式とか制度的にはやっぱり英国に近い部分があって、経済面とか文化面では合衆国みたいな自由主義というか、個人主義みたいなものもあって」

「それこそ憲法なんかも最初の施行時の物は当時プロシヤのビスマルク憲法をお手本にしてましたけど、今では英国式になってますしね。国民の権利や義務が細かく書かれたり、合衆国ぽいところもありますけど」

「そうよねえ。文化にしても、西洋由来のもの、昔ながらの中華や朝鮮由来のものなんかが混ざりあって、本当に前世も現世も日本って変ていうか不思議な国ね。改めて外から見てみて感じたわ」

　そう言って煙草に火をつける沙羅。因みに前世で彼女が吸っていたのはケントエススパークであるが、この時代にはケントシリーズはまだ発売されておらず、日本の煙草には珍しいメンソールの「ピース」（我々の知る高級紙巻き煙草とは別物。第二次欧州大戦終結記念に発売。期間限定の予定が、メンソールの清涼感が若年層に好評で販売継続）を好んで吸っていた。

　時を戻そう。

「そうなんですねえ。まあ、その変な国を更に変な国にしたのはあなたですけどね」

「えー？」

「この昭和の時代に比喩でなく本物の忍者がいたり、やたら男色とかをネタにした漫画が増えたり、兵器を擬人化した漫画を提案して、志願兵募集ポスターもそんな絵が多いですし、そのせいか軍部内でも戦車や飛行機を気持ち悪い愛称で呼ぶ者がいたりするそうで･･････これ、あなたの趣味でしょ？！前世の話聞いたら分かりますよ！」

「まあまあ、この日本や合衆国は自由の国だし。それに戦車や飛行機だけじゃなくて空母や戦艦、巡洋艦、駆逐艦もだもん！」

「だもん！て」

「まあ、兵士達にもそんなのを楽しむ余裕があるくらい国が平和って事なんだし」

「まあ、そうとも言えますけど･･･」

「だいたい、日本文化って完全独自のもんは少なくて古来から中国とか朝鮮の影響受けてきたんだし、明治以降で言えば合衆国やイギリスフランスドイツといった列強の影響バリバリ受けたし、そういう意味では日本人らしいじゃない。てか私も色々やってはきたけど、まさかこの時代に二次元ブーム起きるのは予想外だったわよ」

「今凄いですもんね。映画館でも、幼児連れに混じって十代後半くらいの若者がアニメーション映画見に来たりしてますし」

「時代を何十年か早めただけよ」

　所謂前世のオタク文化というものをこの世界の日本に取り入れ、大衆化するという沙羅の目論見は見事当たった。

　それともう一つ、沙羅が力を入れていた事があったが･･････