そういえば
1948年9月
欧州ではドイツの主権回復へ向けての連合国協議が続く中、東京に居る沙羅は相変わらずの生活を送っていた。
「ねえ博さん。今日給料日だけど、貰ってきてくれた?」
「はい、僕の分もあるので。ったく、相も変わらずぐうたらぐうたら」
「私もう70なんだし、まあね」
「でも実際、あなた最初に会った頃からそんなに老けた感じはないんですよねえ。太りはしましたけど」
「そういえば・・・・・・」
沙羅は博文の言葉にはっとする。転生して、エリザベスの身体も歳を取っているはずなのに、自分は沙羅として死んだ時の年齢のまま止まっている感じがするのだ。
一体これはどういう事なのか。
「その、転生する際に会った霊魂管理局の神様は何か言ってなかったのですか?」
「えー・・・なかなか変な人・・・じゃなかった。変な神様だったしねえ。彷徨える魂を救う仕事って言ってたから、つまり沙羅としての魂をそのままエリザベスに憑依させて、エリザベスが私になっちゃったからとか・・・・・・」
「つまり、エリザベス・ジョンストンは戦死した時点の年齢の井浦沙羅に乗っ取られた。沙羅さんは戦死した時点で年を取る事は無くなったから、沙羅さんの魂が入ったエリザベスさんは歳を取らないと?」
「仮説だけどね・・・・・・って、それじゃ私この世界で永遠に生き続けるって事?!」
「あ、そうなりますね確かに」
「博さんとか松岡さんとか五十五十義博士とか皆死んだって私はひとり生き続けるのね・・・・・・」
「五十五十義博士?!」
「あぁ、私が大統領時代囲い込んでた天才博士よ。ちなみに本名よ」
「えぇ・・・・・・てか歳を取らないにしても、死ぬ確率はゼロじゃないと思いますが。まあ、綺麗な死に方は無理でしょうけど」
「事故死とか殺されてって事?!嫌よ、自殺ならともかく、私だって女なのよ。ぐちゃぐちゃの死に顔とか見られたくないもん」
「ですよね。まあ、あくまで仮説ですからね。あ、そういえば・・・・・・」
「何よ、私が顔出さないから政府側から何か言われたの?」
「そういうわけじゃないんですがね、ちょっと新たな仕事を頼まれまして」
「やだ」
「話は最後まで聞きましょう。今回はめんどくさい会議等では一切ないので。政府主催でこの前、創設したばかりの空軍の創設記念式典を開くので、来賓として参加して欲しいとの事です」
「いつ?帝都で?」
「ええ、来春です」
「分かった、帝都でやるなら引き受ける」
「よかった・・・あ、それとですね」
「まだあんの?!」
「ピース売り切れてたので、ゴールデンバット買って来ましたがよろしいですか?」
「・・・・・・そんな事かよ!うん、まあいいわ」
全然味違うやんと思いつつも、パシらせた手前、文句は言わない沙羅。
ゴールデンバットに火をつけ、これ以上のそういえば・・・・・・は辞めて欲しいと願うのであった。
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