散歩




 前回、不摂生を改めさせようと言う博文によって、無理矢理散歩に連れてこられた沙羅であるが、一旦歩いてみると、あの前世の平成の時代は勿論、前世歴史資料で見たものともまた違う東京の街に心躍らせていた。



「前世で見た写真とか映像じゃこの時期、帝都は焼け野原でバラックがあちこちにあって、これから復興するぞって時だった・・・・・・でも、この世界では内地も外地も無傷で、この帝都も・・・・・・やばい、超感動してる私」



「僕達からしてみれば、少々変わりはしたものの見慣れた街ですが、未来人からすれば古臭い等と思われないのですか?」



「全然。私が自衛隊に入った頃なんか、寧ろレトロブームが来てたし」



「レトロブームですか・・・・・・温故知新ってやつですかね」



「そうよ。まあこの時代まで遡るのは私くらいでしょうけど、昭和っぽいファッションとか流行ってたの」



「ほう。今の帝都では高齢者でも洋服を着るものが多い中で、敢えてまた和服を着るようなものでしょうか?」



「まあそんな感じね。洋服と言えば、私も転生してきた時初めて東京来てびっくりした。学生さんの制服とか、リーマンのスーツとか、ちっちゃい女の子もアッパッパって言うの?ワンピース着てたり、普通に私のいた時代と変わんないんだもん」



「へー、その辺は何十年も変わらないんですね。少し裕福な家庭の女学生なんかは制服で学校を選ぶとか聞きますし。少女倶楽部でも毎年特集してますよ」



「博さんそんなもん読んでんの?」



 少女倶楽部。前世にもあった小学校高学年から高等女学校の低学年の少女向けに発行されていた雑誌である。

 同世代の男子向けには少年倶楽部というものがあった。



「いえいえ、本屋でチラッと見ただけです」



「ふぅん。チラッと見ただけなのに、毎年の特集が分かるのねえ」



「うっ・・・・・・」



「ま、まあ趣味とかは人それぞれだし、私と初めて会ってからずっと独身なのもまあ・・・・・・ね?」



「ね?てなんなんですか?!てか沙羅さんだって似たようなもんじゃないですか!」



 普段、博文に少年漫画や現代で言うラノベのような小説を買ってこさせ、家でゴロゴロとレコードを聴き、お菓子を食べながら読んでいる姿を見ている彼は、お前が言うなと指摘する。



「本当に、あなたに投票した米国市民が今のこの姿を見たらどう思うか・・・・・・」



「もう大統領じゃないし。権限使えるだけ使って、しかも戦時中にあのクソでかい国の大統領になってみなさいよ?そりゃ辞任後は何もやる気無くなるって」



「大統領の仕事はそりゃ大変でしょうが、今の仕事だって重要なものです。ここのとこ帝国の国策方針はあなたの意見がかなり反映されています」




 日本に移住後、前世メタ情報を提供した帝国政府から今後について意見を求められた沙羅は、前世大日本帝国と、敗戦後の日本国の歴史から良い点、悪い点を纏めて政府に提出。それはメタ情報と共にすぐさま奏上された。

 そして、それらの文書を見た天皇も大変興味を示し、内閣に対し、沙羅の情報を元に、今後の帝国の展望について充分議論するようにと求めたのである。

 これ以後、帝国政府内部で議論が交わされていくが・・・・・・












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