もう一回言って
1948年の初夏、沙羅が博文の報告に疑問符をぽぽぽぽーんと浮かべながら聞き返す。
「ですから、独国駐留の日米連合軍に対し、英仏軍の兵士達の一部が発砲しました」
「えぇ・・・・・・忍者からは変な動きの報告無かったじゃない」
「まあ恐らく現場の暴走とは思いますが・・・・・・」
「死傷者は?」
「外務省、陸軍省からの情報ですが、日本兵、米兵一名ずつが死亡。他、重傷者多数との事です。現在、帝国政府は合衆国政府と共に英仏へ非難声明を発表しています。テレビ付けますね」
テレビジョン受像機の電源を付ける博文。この頃、日本ではNHK以外の民放局がやっと一般向けにテレビ放送を開始したばかりで、受像機も到底庶民の手が届く額ではなかったが、沙羅は発売当初に購入し、ちょっとした改造を施してもいた。
「あ、映った」
テレビ画面に、外相と陸相の共同会見の様子が映し出される。
大まかには、今回の事件について非難しつつ、今回の件で英仏両国との関係悪化は望まないとの内容である。
「すぐ片付きそうね」
「そりゃ国と国はそうでしょうけど、現地の当事者達は・・・・・・」
実際、現場では事件の収拾にかなりの時間を要した。
日米側が突然発砲されたと主張するのに対し、英仏側は、日米兵士の挑発行為を主張していたのである。
結局、最後には発砲した兵士達の上官が謝罪する事で事態は収まったが、この事件以降ドイツ駐留連合軍の間にしばらく緊張が走る事となった。
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