声明






 第二次欧州大戦の終結からはや五年、日米両政府はとある共同声明を発表した。その主な内容は以下の通り



 一.アメリカ合衆国連邦政府及び大日本帝国政府は、経済、軍事、外交面での連携を強化し、ここに新たな同盟条約の締結を宣言す。


 一.今次条約は即時に効力を持つ。


 一.日米両国は、現在ドイツ国内に駐屯する軍事力の縮小、新ドイツ国の独立支援を推進す。


 一.両国は共同で、新たに中東地域の油田掘削権を購入した。


 一.大日本帝国政府は次期日英同盟、日露同盟を更新しない。




 といったもので、戦時中に結ばれた秘密同盟を公表した形である。

 この世界では国際連合の誕生は沙羅が阻止しており、その変わりに転生後に米国民にメリットを語り認めさせ、なんとか連盟へ参加。数年に渡り口出ししまくり、常任理事国の権限を強めていた。

 英仏露が日米の行動に不信感を持とうが、両国も拒否権を持つのである。中東油田掘削権購入も彼女の策略で、正に世界は日米のものとなろうとしていた。

 そんな中、日本政府特別オブザーバーとしてその計画を進めていた沙羅であったが、彼女は今、またホワイトハウスに身を置いていた。




「ふふふふふ・・・・・・はーはっはっはっ!この世界は私のもの・・・・・・」



 再び大統領の椅子に座り、高笑いする沙羅。



「エリザベス女史、あなた確か東京で余生を過ごすとか言ってましたよね。なんでまた戻ってきたんですか?あと、大統領の椅子に勝手に座らないでください」



「あら、私に指図するたぁ偉くなったわね、マイク」



「いやいや、急に帰国したと思ったらホワイトハウスに押しかけるとか、いい加減ですよ!」



「まあいいじゃない。今のこの状況・・・・・・アメリカと日本で世界を動かす・・・・・・これは私の任期中に全て種を蒔いてた事よ?つまり、私がこの世界を統べる者」



「いいからさっさと東京に帰れババア」



「ふふふ、まあ東京にいても連邦政府内の事は分かるしね。じゃ、新大統領のパトリシアによろしく」



 そう言って、不気味な笑みを浮かべながら出ていく沙羅を、マイクは相変わらずキモイババアだなとか思いつつ見送る。

 そして、このホワイトハウス押しかけ事件から数週間後、沙羅はまた船酔いに苦しみながら東京に戻り、博文を連れて銀座の街へ繰り出した。



「沙羅さん、あなたの他にも転生者が居たって本当なんですか?」



「うん、私もびっくりしちゃった。なんかの罠かと思ったけど、この世界の人間じゃありえないようなワードが結構出てきて確信した」



「その人、名前はなんて言うんです?」



「下の名前は忘れちゃったけど、杉下さんとか言ったかな」



「僕達が言うのもあれですけど、結構珍しいですね。で、こんな街中でどうやって待ち合わせるんですか」



「まあまあ渋谷にハチ公がいるなら、この銀座には服部時計店ていう目立つものがあるじゃない」



「はぁ・・・・・・」



 そんなんで大丈夫かと思う博文だが、まあ向こうも沙羅の顔は覚えているだろうと、人のひしめく銀座の街を歩く。

 それより転生者の杉下とは何者か・・・・・・


















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