ねこ忍者さも竹 20200222
ぶち之国に仕える忍者に、桃尻さも竹という者がいた。白毛に黒ぶちが多くついた猫で、しっぽが鍵状になっているところから幼名を鍵助といい、幼い頃より才覚を顕し一歳のころには大人の猫でも追いつけないほどの速さ、どんなところにも潜り込む体のしなやかさを持っていた。周りの猫からは「さも竹のように成長する」と言われ、それが今の名の由来となったのは間違いない。
しま之国にて諜報している折、殿中にて日にゃ本最強の武士、守方また貞が登用されたことを知る。また貞とはヒゲ家に生まれた男で、弓を放てば三里先まで届き、槍や刀を持てば兜を叩き割るほどの力を持ち、また、鎧を着ての早さも馬より早く、略にも長けた人物である。急ぎぶち之国に戻り、事の重大さを報告しようとするさも竹だったが、焦りからしま之国の侍に見つかってしまい、矢の降る中必死に逃げ回るが疲れ果て、ついには城外の川に落ちてしまう。体に矢が刺さり、水で冷え、半死半生で流される中、夢の中に菩薩が現れた。菩薩が言うには「これからぶち之国としま之国の戦は守方また貞によって荒れ、多くの死者が出ることになる。しかし、おまえが国に情報を持ち帰らなければしま之国側の死者は少なく済む。どちらにせよぶち之国はここで終わるとすれば、より死者が出ない方がいい。ならばお前は毛玉山の寺に向かい、そこで静かに暮らすのだ」とのこと。気がつくとさも竹は川辺の樹に寄りかかっており、傷は塞がっていた。
結局、さも竹は国に戻り、事の次第を話した。そして夢の中の菩薩が言った通りに戦が起き、また貞によって多数の被害がでてしまった。しかし敗北し、国は失くなったものの、さも竹の報告のこともあり戦えない者たちは逃がされ、その後を生きたのだった。
戦が終わった晩のことである。民を逃がすために先導していたさも竹は、突然の睡魔に襲われ歩きながら眠ってしまった。その夢の中でまた、菩薩が現れた。「おまえは忠告を守らず、多くの死者を出した。しま之国の武士どもはお前を憎み、呪うだろう」と言い、それきり姿を消した。目覚めてみると、さも竹の足は動かなくなっていた。自分が荷物になり民の進みが遅くなると思ったさも竹は自分を置いて隣国に行くように指事し、道端の捨て置かれた地蔵を前に菩薩の忠告を破ったことを悔いた。七日七晩地蔵に祈り供養しながらも体は痩せ、呼気が止まり、ついにその命を終えようとしたその時である。突然夢の中に、これまでとは違う菩薩が現れた。「今までお前の夢に現れたものは菩薩ではなく、毛玉山に住む鬼である。しま之国は鬼と手を組んでおり、また貞は猫と間に生まれた鬼であった。おまえが国に帰り、報告したおかげで隣国が動き、その中の武士、さご清によってまた貞は討たれるだろう。死したまた貞は姿が猫から鬼へと変わり、それによってしま之国と鬼の企みに隣国が気づく。そして周りの国を巻き込んで鬼退治が成り、猫の世は元の姿に戻るだろう。よくやった」と言い、消えた。目覚めてみると足は動くようになっており、地蔵には酒と饅頭が供えられていた。それによってさも竹は隣国まで走ることができ、そしてその足でもって士を探し集め鬼退治を成し、後は修験者となり、仏と共に生きたと言う。
きせつのうた 西行枝@ @yo_mu4646
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。きせつのうたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます