構って攻撃と幼馴染
「うう……もう……だめぇ……」
「どんだけくすぐり攻撃に弱いんだよ」
僕のしたお仕置きは唯脇をくすぐっただけ。それ以外の事は何もしていない。にもかかわらず咲夜は今、僕のベットの上でだらしがない表情で寝ており、服も若干はだけている。その様は事後の様に見えなくもない。
「こんな姿にされて……もう……お嫁にいけない……」
「ふ~ん。そうか」
「反応薄いよ‼ そこは僕が貰ってあげるとか言ってよ‼」
「恥ずかしいから嫌だ」
「そんなこと言わないで。ほら‼ 一回だけでいいから‼」
「嫌。そんな事よりちょっと黙ってて。先輩から貰った情報整理したいから」
「ぶぅ……まーくんのイケず~」
「イケずで結構」
ええと。ふむふむ。先輩もどうやら昨日あまり聞きだせなかったようだ。ただあの人は星野さんのあの人間嫌いは、彼女の容姿に関係があると睨んでおり、とりわけ彼女の容姿が原因で何らかの人間関係の破壊をまねいたのではないかと思っているみたいだ。
確かに納得はいく。だって星野さんは口では人嫌いと言いながらも僕たちにきちんとした忠告をしているのだ。それは自分と関わって欲くないからとかではなく、本当に自分と関わると不幸になると思っているからであって、彼女の根っこの部分が本当は人が好きで、もっと関わり合いたいというのを望んでいるからであろう。
だがこれを知ったからどうする? 彼女の犯した人間関係を復活させればいいのか? 無理だ。まず彼女が崩壊させた関係がどのようなものなのかもわからないし、何年前の物でその数もわからない。
この問題。思ったより質が悪い。人間関係というのは、部外者である僕が容易に踏み入っていい物ではなく、大切なのは当人の意志。当人が上を向いて歩く決意をしない限り永遠にその沼から抜け出すことはできない。
だとすると僕のスタンスは一貫して星野さんの気持ちを前向きにさせるというのが大事……いや。それではダメだ。むしろその役目は先輩にやってもらえばいい。
先輩が僕にこの情報を渡したのもきっとそう言った意味があるからだろう。表は先輩。裏は僕。それがおそらく一番好ましい。
星野さんの方は……大丈夫。先輩ならきっとうまくやってくれる。問題なのは僕の方で、果たして一体どうやって情報を収集したものか。
敦と合流するか? ダメだ。早乙女さんの僕に対する印象は最悪。そんな僕が関わっていいことなどあるはずがない。だとするとどうする? 考えろ。頭を回転させろ。無い知恵をひねり出せ。
「ねぇねぇま~くん」
「……何?」
「構って欲しいにゃぁ~」
「ごふ……」
か、可愛い。でも今ここで咲夜に構ってしまうとまた前の二の舞に……待て待て。僕にとって大事なのは咲夜だ。その咲夜を蔑ろにしてどうする。先輩にも言われたばかりだし、一旦星野さんの事は忘れよう。案外その方がいい考えが思い浮かぶかもしれない。
「いいぞ。何して欲しいんだ?」
「おお‼ 珍しい‼ 最近は構って攻撃しても構ってくれなかったのに‼」
「……すんません」
「ううん。気にしないで。まーくんがそうやって人の為に頑張ろうとしているところ。私好きだから」
「……ありがとう」
咲夜め。僕を褒め殺すつもりか。そんな事したって何もあげないんだからね‼
「ニヒヒ。照れてる。照れてる」
「うっさい‼ そんなこと言うやつはこうだ‼」
「あははは‼ ちょ、まーくん‼ やめ、あははははは‼」
咲夜の横腹。ぷにぷにしてて気持ちい。これが俗にいう女の子の柔らかさというやつか……ヤバい。病みつきになりそう。
「あ、まーくん。目がいやらしい~」
「い、いやらしくない‼ 失敬な事を言うでない‼」
「ええ~語尾が可笑しいよ~それに声も上擦ってるし~」
「にゃ、にゃにを言っているのかわからないな~」
「ふ~ん。そういう事言うんだ。それならこれ以上私の体触らせてあげない」
「なん……だと……!?」
「あ、でも胸なら触ってもいいよ?」
「触れるか阿呆‼」
咲夜の胸の感触。今思い出すだけでも自然と顔が熱くなる。あの感触をもう一度味わいたくないかと言われれば僕は即味わいたいというだろう。でも今はダメだ。付き合っていない今は。
「ほれ~ほれ~触ってみ~ほれほれ~」
「く、くるな‼ 僕は屈しないぞ‼ 絶対に‼」
「へっへっへっ‼ そう言っていられるのも今の内だけですぜ。旦那」
「……流石にその発言は引くぞ」
「……いった私もそう思う」
「それならはなから言うなよ……」
「ごめんなさい……」
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