悪寒と幼馴染
「あの人は全くもう……」
結論から言えば僕の悪寒は当たっていた。
「どうかしたの?」
「え、ええと……」
このメールを果たして人に見せてしまっていいのだろうか。確かに本文の部分に関しては、問題はないだろう。何せメールに書かれている事自体は星野さんの事に関することで、昨日何があったかや先輩の所見が書かれているだけなのだから。
僕が問題視しているのは、メールに添付されていたファイルである。どうしてLI〇Eではなく、メールで送ったのかはここに全ての理由があると言っても過言ではない。
「何? 何? 私に見せられない物なの?」
「いや、まあ、うん。なんというか見たら咲夜は発狂するか怒るかどちらかの反応をする代物だと思う……」
「ふ~ん。なるほど。大体分かった」
咲夜の奴、先ほどまでの穏やかな表情から打って変わって鬼の様な顔をしている。きっと先輩に関することなのだと勘づいたのだろう。
「まーくん。スマホを今すぐ渡して?」
「ええと……いいけどきっと見たら後悔することに……」
「いいから渡せ」
「……はい」
ここで抵抗したら僕は即刻アウト判定される。それは何としてでも阻止せねばならない。ただ……咲夜の奴この後絶対怒るだろうなぁ……はぁ……どうやってなだめよう……
「な、ななななな!? あいつ‼ なんてもん見せてくれるのよ!?」
「やっぱりそう言うと思った……」
咲夜の顔は羞恥によるものかそれとも怒りからくるものかはわからないが、今真っ赤に染まっているということだけはわかる。
それも仕方がないことだろう。何せ先輩は添付していたファイルに自身の
「まーくん‼ この人頭おかしいよ‼ 普通こんな事、まして付き合ってもいない男性にしないよ‼」
「いや、まあそこは先輩クオリティだし……」
あの人が素直に情報をくれたのは嬉しかったのだけれど写真の方は完全に余計だった。大体こんなもの渡してもし僕が悪人だったら今すぐネット中にばらまかれるぞ。まあそこは信頼しているからこそなのかもしれないけど、こういう信用の仕方は今すぐ止めて欲しい。
「というかまーくん‼ この写真見たの‼」
「ええと……それはまあ見ましたけど……」
だって仕方ないじゃないか。人間誰しも送られてきたものの中身を確認せずにはいられないし、僕だってまさかその様なものが入っているとは思わなかったのだから。
「ふ~ん。見たんだ……」
何故だろう。段々雲行きが怪しくなってきたぞ。
「み、見たけどホラ‼ 大事なところは謎の光とか髪の毛とかで隠れていたからノーカンで……」
「そこまで見てたら殺してるよ?」
「誰を!?」
「そんなの……決まっているじゃない?」
先輩だよね? 僕じゃないよね? 先輩の事は何度だって殺してくれても構わない。何なら道端にさらし首にしてくれたってかまわない。だから僕の命だけは……などと思えるほど僕は屑にはなれないんだよなぁ……
「……脱ぐ」
「はい?」
「……私も全裸になる」
「ちょっと待て!? どうしてそうなる!?」
「だってまーくんあの人の全裸見たんでしょう!?」
「いや、まあそうだけどそれがどうして咲夜が脱ぐことに繋がるの!?」
「だってまーくんあの人の裸見て興奮したんでしょう?」
「はい?」
この子は一体何を言っているのだ?
「まーくんが興奮していい相手は私だけなの‼ 私以外の女性の裸を見るのは絶対に嫌なの‼ それぐらいわかってよ‼」
「ええ……」
咲夜の言い分何となくわかる様な気がするが……なんだろうこのやるせない気分は……
「それにまーくんが女性の裸を見るのってあの人が
「ちょっと待て」
「何!?」
「今の部分について訂正させて欲しい箇所がある」
「どこに間違いがあるというの!?」
「僕が女性の裸を見るのが初めてという点だ」
「え!? ま、まさかまーくんて既にそんなに汚れ……」
「咲夜の頭の中で勝手に結論づけるでない。そして僕が異性の裸を初めて見た相手は咲夜だよ」
「……へ? あ……」
どうやら咲夜も思い出したらしい。
僕たちは実のところ既に裸を何度も見合った関係なのである。とはいってもそこに邪な感情も事実もなく、昔咲夜が僕の家に泊りに来た際何度も一緒にお風呂に入っていただけなのだが、それは僕にとって咲夜との間に作られた大切な思い出の一つなのだ。
「いくら何でも頭に血が上りすぎた。それともあれか? 咲夜にとって僕との思い出などどうでもよかったとでもいうのかな?」
「い、いえ。そんな事ありません……」
「ならもうちょっと冷静になろうか?」
「え、ええとまーくん怒ってる?」
「怒ってないよ? うん。全然、全く怒ってないよ?」
「嘘だ‼ 目が笑ってないもん‼ 絶対怒ってるよ‼」
「だから怒ってないってば。でも……悪い子には
「ま、まーくん?」
「大丈夫、大丈夫。痛みは一瞬だから……」
「痛いの!? え、ちょ、そんなのダ……」
「ふふ……ふふふふ……ふふふふふふふ……」
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