第5話 戦闘開始

「兵は集まったか!それぞれ配置につけ!!」

「見張り!魔物達に動きはないか!!」

「今のところありません!」

「『トゥルー・アイズ』を付与されてない人はもういないわね!まだの人は早く来て!音もなく近づかれて死ぬわよ!!」


 隊長の先の元、各兵士達が戦いの準備をしていた。それぞれの顔には緊張が見られる。いかに騎士といえども、あの数を相手に戦う経験はそうないのだろう。


「魔物達が動きました!!ここへと向かっています!!」

「来たか。門を開けろ!!この町を守れ!!団長がいない今、私たちだけでこの危機を乗り越えるぞ!!!」


オオオオオオオオォォォォォォ!!!!!


 町の門が開け放たれた。今の俺たちには奴らの姿も、その呻き声も、こちらに向かい地響きをあげる足音も確認できる。


「行くか。」

「ああ!」


 戦闘が開始した。


 ウオオオァァァァ!!


 盾を構え突撃する槍兵達、後方から援護射撃する弓兵隊。魔女は魔法をもって前衛をサポートし、他の用心棒達も魔物達を斬り付けている。


 戦況はこちらが有利に見える。しかしこのままではそれも時間の問題だろう。限られた戦力、その上こちらには準備する暇も少なかった。


 500を超える数の敵に対してこちらの戦力は100足らず。自力や体力では人間は個で魔物に劣る。いずれ体力は消耗し、戦況は逆転するだろう。


「やはり数が多い!!このままではいずれ———!?避けろぉ!!!!」


 ドオオン!!と隊長の声をかき消すように爆音が響く。空を見上げるとそこには翼を生やし、一つ目の化物が口から火の玉をこちらに向かって吐き出している。しかもそいつの数も多く、30匹ほどが一斉にこちらを攻撃していた。


「クッ、弓兵!!あいつらを打ち落と———」


 騎士の一人がそう言い終わる前に、ビュッ!!とある風を切る音とともに、空の魔物の身体は一斉に真っ二つに切り裂かれ、そのまま地面へと落ちていった。


「お見事。」

「あんなのもいたのか。ハエみたいに飛ばれると鬱陶しいからな。」


 声の先にはすでに周りの魔物を全て片付け、空を見上げているアランとエリカトルがいた。


 アランはその空気を操る能力で風を鎌鼬のように飛ばし、遠方の敵も蹴散らしていく。


「なあアラン?私はどこまで暴れていいんだ?」 

「こちら側に被害が出なければいい。派手にやって神の力を見せつけてやれ。」

「望むところだ。」

 

 エリカはそう言うとニカッと笑い、次なる標的の魔物達のもとへと走り出した。


 両腕を前に構え、力を貯めると同時に、彼女の拳の周りを赤いオーラが漂い始めた。


「赤鬼———『紅勾玉べにいろまがたま』」


 エリカはその赤く光るオーラを纏った拳を目の前の敵に打ち込み、そのまま地面に叩きつけた。周りの地面はひび割れ、大きなクレーターが出来る。それと同時にその付近の地面は熱を発し次の瞬間、ヒビ割れた地面からは大きな火柱が大量に出現し、周りの魔物もろとも焼き尽くした。


「なんて力だ!?」

「あれだけの魔物が一瞬で炭に変わったぞ!!」

「俺たちも続け!!!」


 エリカのその様子を見た騎士達は驚くと同時に、さらに活気が増し、魔物達に向かう。


「あの火の魔法、すごい威力ね。発動する際の魔力の高まりと勢い、凄まじいものだったわ。あの子一体何者なの。」


 魔女は圧倒的なエリカの力に少し困惑している様子だった。


「負けてられないわね。」


 が、すぐに自分も魔法を発動させ、騎士達が苦戦している敵へと攻撃を始めた。


 雑魚達は周りの奴らに任せればいいだろう。エリカがいるし、それに人間も個々で優秀な奴もいる。

それよりを俺は———


「———『グランド・フォロー』———」


魔王軍が進軍してきた方角に向かって能力を発動した。

 これだけの数、恐らく指揮をしている者がいるはずだ。姿を隠す魔法を使っていた奴もそいつ自身かその周りにいるだろう。

 今は魔物の数も減り、戦いで散り散りになっている。群れの中で特別大きな魔力が有ればそいつが親玉だ。


「———見つけた。」

 

 俺はその大きな魔力の感じた方へと走った。それを見た隊長がどこへ行くのかと尋ねてくる。


「敵の親玉らしき者を見つけた。俺はそいつを叩く。俺一人で十分だからアンタラは引き続き周りの奴らを仕留めてくれ!」

「!——わかった!!君を信じよう!!」


 勝手な行動ではあるが意外とすんなりと認めてくれた。先ほどからの戦いやエリカの力を見て、俺の実力も十分だと判断してくれたのだろう。

 俺は隊長の言葉に頷き、森の中へと駆けて行った。


 

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人間使って世界救うのも面倒だから直接神様放り込みます マカロン星人 @takeru627

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