第4話 参加交渉
「町を襲うだって!?500以上の魔物に攻められたらひとたまりもないぞ。」
「いや、これだけでかい町だ。憲兵や護衛団みたいな自衛組織ぐらいあるはずだ。」
———だが数が数だ。夜に奇襲されたらどのみちヤバイな。いや、待てよ?
「なあアラン。その魔物達は町を奇襲するんだろ?その割には待機している場所が近すぎやしないか?」
「ああ、しかも数を分担してるわけでもなさそうだし。あれだけの魔物がこれだけ町の近くに潜んでいれば流石に気づかれるだろ。」
———町側は気付いていない?それとも気付いていてあえて放置しているのか?どちらにしても、、、
「街へ向かうぞ。」
「おお!魔物共はどうする?町に行く前にサックっと壊滅するか?」
「いや、この状況をまだ把握していない以上、軽率に動くべきではない。それにこれはチャンスだ。もし町がお困りなら助けてやることであそこでの布教活動がやりやすくなる。魔物共が魔王軍ならならなおのこと良い。」
俺たちは町の方角は走り、すぐに入り口である門が見えてきた。左右には見張りの騎士が二人立っていた。
「ん?君達旅人か?もうすぐ日が暮れるぞ。早く町に入って宿を探した方が良い。」
「ああ、助かる。それよりあんたら、ここから南東の方角の森に魔物の群れが潜んでたぞ。数は軽く500はいたぞ。」
「何!本当かそれは!!」
「どうした!?」
———やっぱり気付いていなかったのか。
話していた騎士が大声を上げたため、もう片方の騎士、さらには門の向こう側にいた騎士も寄ってきた。そして、話していた騎士は俺に言われたことを他の者達にも説明している様子だった。
「ありえん!それほど大規模な群れが近づいているのなら見張りの者たちが気づくはずだ。」
「奴らは恐らくアンタらから見つからないように何かの術を使っているはずだ。それで町の人たちが寝静まったところで襲撃するつもりだ。」
「!!それが本当なら大変な事態だ!」
「とにかく本当に魔物共が潜んでいるか確かめるんだ!」
「見張りに連絡しろ!それと索敵に長けている者も集めろ!急げ!!」
————
数分後、とりあえず町に入り、騎士たちの詰所に通された俺たちのもとに、数人の騎士と共に、長い赤髪を垂らし、黒い衣装に包まれたいかにも魔女のような格好の女がやってきた。
「まず聞くけど、貴方たちはどうやって魔物の存在に気付いたの?」
「、、、俺は広範囲を探知する術を持っている。森に迷って人のいる場所を探している時、この町と一緒に複数の魔物の魔力を見つけたんだ。」
「、、、そう。とりあえず信用しても良さそうね。」
どうやら少し俺たちを不審に思っていたらしい。まあ、見張りが気付かなかった魔物に旅人の俺たちが気付いたとなったら、確かに少し怪しい。
「確かに貴方たちの言ったように魔物の群れは潜んでいたわ。あたり一帯に光の魔法で光を屈折させて周りから見えなくして、『サイレント』の魔法で音を消して潜んでいたわ。」
「へえ、お前はどうやってそいつらを見つけたんだ?」
横で出されたお茶をすすっていたエリカが尋ねた。
「、、、『トゥルー・アイズ』。この魔法は他の魔法で隠したり偽装したりした物を見抜くことができる。」
「なるほど。」
———俺が魔物達を見つけたのはあくまで感知したのであって直接見たわけではないからな。
「魔物を見つけ、報告してくれたこと感謝する。戦いが始まればここも危ない。今町の住民達に避難勧告を出している。君達も早く町の奥へと避難するんだ。」
魔女の横にいた一人の騎士が俺たちにそう言った。他の騎士とは違う防具に身を包み、他とは違う風格を感じさせる。
「アンタは?」
「申し遅れた。私はこの町の騎士団の二番隊隊長だ。」
「あとついでに私はこの町の用心棒みたいな者よ。雇われたのは数日前だけどね。」
「とにかく、君達は早く避難するんだ。」
騎士隊長はそう促すが、残念ながら俺たちにもやりたいことがある。
「なあ、これからアンタらは外の魔物と戦うんだろ?その戦い、俺たちも参加させてくれないか?」
「!?な、何をいう!!?」
俺のその言葉に隊長と周りの騎士達はザワつきだす。今まで茶をすすっていたエリカは待ってましたとばかりに、目を輝かせていた。
「俺たちは腕には自信がある。事前にに敵に気付けたとしてももう外は暗い。暗闇に目がきく魔物達を相手するのはアンタらには不利だろ?」
「何を言っているんだ!?あれだけの村の数。恐らくあれは魔王軍だ!それもあれだけの規模、幹部が率いていたとしても不思議ではない!」
「幹部?いたのかそんなやつ?」
「さあ?数が多すぎてそこまではわからなかったわ。でも、あれだけの数の魔物を隠せるってことは、相当な術者が、それも複数ある可能性が高いわ。」
———幹部か。流石にあれだけの魔力が密集した中で、他よりも大きな魔力を持つ者は判別できなかったが。それよりもやはりあれは魔王軍か。なら余計にこの戦いに加わらない手はないな。
「何も遊び半分で戦おうと言っているわけではない。俺たちは、魔王を倒すつもりだ。」
「!!?」
その俺の言葉にさらには周りはザワつきだした。
「まあ今はそんなことはいい。俺たちを戦いに参加させてくれ。」
「し、しかしだな。」
「いいんじゃない?別に。」
魔女はそう言って俺たちの方を再び観察し、隊長の方へ向き直った。
「彼らが真っ先に魔物を見つけてくれなきゃ、最悪の事態になっていたかもしれないし。何より、今この町にはあの数を十分に相手するほどの戦力があるか怪しいじゃない。」
「君まで、、、」
「なあ、自分で参加すると言っといてなんだが、この町ってかなり大きいだろ?それなりの戦力はあるはずだろ?それなのに用心棒まで雇っている。」
「数日前、この町の騎士団長と何人かの隊長が王都へ召集されたの。なんでも魔王軍への対策かなんかの会議するって。その穴埋めとして私やあと数人が用心棒として雇われたってわけ。」
「ああ、団長がいればあれだけの数も難なく壊滅できるだろう。彼はこの国、いや、この世界でも五本の指に入るほどの実力者だ。」
「そんなに強いんだ。是非戦うまで見たいね。」
強者の話が出た途端、またエリカの目つきが変わった。忘れたいるかもしれないが、相手は人間で俺たちは神なんだぞ。
「じゃあ尚更俺も参加させてくれ。俺なら暗闇でも相手の位置を探ることができる。」
「私は賛成よ。あの数を相手にするのは骨が折れるし、犠牲者が出る可能性も高いわ。今は少しでも戦力が必要でしょう。私の見立てによると実力はありそうだし。」
「、、、わかった。ただし現場の指揮を取るのは私だ。くれぐれも勝手な行動はしないように。」
「感謝する。」
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