第1話 着地

 この世界の名はグランドラ。今現在、突如現れた魔王によって侵略を受けている。


 そして、その世界の遥か雲の上で、ある二人の神が降臨した。


「なんでこんな上空なんだ?ほとんど嫌がらせだな。」

「おい!そんなこと言ってる場合か!お前はともかく私は飛ぶことができないんだぞ!」

「開幕早々一柱脱落か。」


 そんな事を言いながら俺たちは重力に逆らう事なく地上へ向けて落下していた。もっとも俺は何も問題がなかった。俺が司るもの『自然』は、一言で言っても色々ある。


 落下し始めて少し経ち、地上が見えてきたところで、俺は少し力を入れ、身体の周りへ集中した。すると、その瞬間、俺の身体の周りの空気が渦を巻き、小さな竜巻のようなものが出現した。その風によって落下速度は殺されていき、最後にはピタリと空中でその身体を停止させた。


 『自然』とは、天候、大地、動植物、それらの環境全てを指す。『自然』を司る神は、俺以外にもいくつか存在する。だが、そのそれぞれが象徴するものは異なる。例えば天候を司る神やある一つの季節を司る神などだ。俺が司る『自然』は『空気』と『大地』だ。だからこうやって周りの空気の流れを操る事で宙を浮くことができる。


 基本神様と言っても飛べない者はそう少なくない。俺は自分の力で神殿まで辿り着いたが、普通は呼び出された神には迎が用意され、エリカもその迎えによって神殿へと辿り着いた。


「クッソッッ!」


 地面に激突するであろう数秒前、エリカは自分の拳を構え、そして————


「フンッッ!!」


 力一杯地面に向かって叩きつけた。おそらく激突による衝撃を和らげるつもりだったのだろうが、普通なそんなことしてもほとんど意味がない。だが彼女は違った。


「イテテ。おい!なんで助けなかったんだよ!!危うく死ぬ所だったぞ!!!」


 砂埃が無くなり、顔を見せたと同時怒鳴り出したエリカの身体には傷一つついてはいなかった。


———化物め。逆にどうやったら死ぬんだこいつは。


 そんな事を考えながら俺はエリカの元へと降りていった。何故俺たちがこんな世界へと来てしまったのか。それは約15時間前に遡る———

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