第28話 女王篭城戦・破-参
「おい! 上に逃げたぞ!!」
「まちやがれ!!」
73階までは順調だったが、74階に登った時にブラックが上階に気配を感じた。先行してブラックとブラウンが75階に登ってクリアリングをしていると、爆発音と叫び声が聞こえたので急いで上に向かう。すると目的である女王と狂犬が下に降りて逃げようとしていた。
「ゴールド、どうする?」
向かい側から逆通路を探索していたガール,黒ウサギ,白ウサギが合流して次の行動を待っている。
「そうだな、担当する階段は変えずにそのまま一階ずつ登ろう。上手く行けば挟み撃ちだ。こちらは数的優位を最大限に利用して油断せずに戦うことを頭に入れてといてくれ」
それぞれ担当しているのはY型通路の左上階段がゴールド、シルバー。右上階段がウサギ達、下階段がガール達だ。
「おーけー。ならワタシは先に登ったマッチョを探しつつ下階段から登ろうか」
どうやらマッチョは先に登って探しにいったらしい。勝手な真似をしやがって。ここでチームワークは大事だと分からんのか。
「よし、頼むわ。女王らを見つけてもそれぞれ無理せずにな、死んだら元も子もないから撤退して仲間と合流していこう」
こうして俺らは奴らを探すため再び階を登り始めた。
――――――――――――――――――――
「77階もいないか。どこに行ったあいつら」
「上まで逃げてるとか? 何を考えているのか分からんな」
一階ずつ慎重にチームで探していく。あいつらも、上に逃げたところでいずれは俺らに見つかると分かっているはずだ。どこかで仕掛けるタイミングが来るはずだが……。
あまり足音を立てずに次の78階に登って初めの部屋に入る。
そろそろ出てきてもおかしくない……
「いたぞ!!!」
突然、部屋の外から声が聞こえる。これはガールの声だ、ということは下の通路か!!
敵を逃さないために急いでシルバーと部屋を出る。
「おら、こいや!!」
「なら逃げるな!!」
狂犬がガールから逃げてこちらに走ってきていた。逃げ切れると思っていただろうが……どうやら運が尽きたようだな、これで挟み撃ちにできる。
「大人しくくたばれ!!!
逃げ場のない狂犬に手を向けて魔法を放った瞬間、向かい側のガールからも同じ魔法を放つ声が聞こえた。
まあ悪くない。炎で挟み撃ちにされるし、当てれば二発分のダメージを負うことになり、おそらくさっきのダメージと合わせて狂犬は終わりだろう。
お互いのイグニスが狂犬に迫る。
「甘いぜお前ら!」
このまま終わるかと思った矢先、狂犬はすぐ右の部屋に飛び込んだ。
「ちっ、最後まで悪足掻きしやがって。それこそ袋のネズミだろ」
確かにイグニスから逃れることは可能だが、結局は出入口が1つしかない部屋に追い詰められているのだから……終わりだろう。
最後のトドメを刺すために狂犬の逃げた先に向かおうとすると、側にいたシルバーが叫ぶ。
「ゴールド! いますぐ横に飛べ!!」
言葉の意味を理解できず訳もわからず唖然としていると、対象を失ってそのまま壁に衝突するはずのイグニスがこちらに迫ってきたのだ。
「っなんでだ!?」
わけも分からず隣の部屋に転がって飛び込む。するとさらに頭の理解が追いつかない現実が目の前に現れる。
「よぉ、また会ったな」
「きょ、狂犬……ぐっ!?」
跳び込んだ部屋の中心に、先ほど別の部屋に逃げた狂犬が、黄色いスパークを纏った斧を俺に振り下ろしてきた。
当然、避ける暇もなく斬られる。すると斬られた部位から強烈な痺れが襲ってくる。
「な、なにを、」
「何も分からずそのまま死にな」
身体を掴み投げ飛ばされた。それくらいのパワーはどのアバターにも存在するし、それを耐えるくらいの力を俺も持ってるはずだが、なにせ身体に力が入らないので耐えることなく壁に衝突する。
そのまま奴は魔法を放つ。
「
正面から水の魔法を受け、俺はそのまま壁を突き破り外に放り出された。
地に堕ちながら思考を続けるものの、何も理解ができないまま俺の視界は真っ暗になった。
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