第25話 女王篭城戦・序



 時は少し遡り、国から通告メールが来た直後のアル&グレイの話に戻る。



 話が空いたので、忘れた人に向けて前回のチーム女王のおさらい



 アルがビルの屋上で何も考えず支援物資を要請した結果、敵がたくさん湧いて囲まれたぞ♪






 ――――――――――――――――――――――――――







「どうしてくれんだよ!!」


「どうも何も、別に全部倒してしまえばいいじゃない」


「全部倒してしまえばいいじゃないって……」


 支援物資に集ってきたプレイヤーが何人いるか分からないが、おそらく2チーム以上は狙いに来ていると予想する。

 なにせここは中央のかなり大きいビルなので、誰しも見上げればビルの屋上に戦闘機が通って何か落としたって分かるはずだ。

 もしくは、ここで大規模な戦闘が起きると予想したプレイヤーが、ハイエナのようにドロップ品や最後の一撃を狙いに来る可能性もある。


「とりあえず支援物資の中を確認しよう。先取っておいて損は無いからな」


「わかったわ」


アルが空撃された赤い支援物資の中を確認する。メールには最強物資が入ってると言っていたので、かなり期待してしまう。


「えーっと……中には魔法と……武器じゃなくて……魔道具??ってのがありますわ」


「なに? 魔道具だって?」


 予想外の物が入っていた。個人的には武器が欲しかったが……その道具が何かによるな


「ちょっと見せてみろ」


 アルは魔法を受け取り、俺は魔道具を貰って確認してみる。デバイスから選択して装備、さてさて何だ……。


「ははっ、こりゃ面白い。この屋内戦で大活躍しそうだ」


「ちょっと、1人で楽しまないで私にも教えてよ」


 アルがのけものにされて顔を膨らます。まるでフグだな。


「あ、いまバカにされた気がしますわ」


「してないしてない。ほら、これ受け取れ」


 俺はアルに魔道具の片側を投げ渡す。これは2つで1つ、アルも装備しないと意味がない品物だった。


「もしかしてこれ……通信機?」


「そうだ、というか別に魔道具じゃなくても現代に普通にあるけどな」


 今の時代、Bluetoothやら無線やらで通信機なんか簡単に作れるからな。ただ、かなりサイズは小さい。小型の無線イヤホンを耳に着ける感覚だ。

 いまのところ通信機ってことしか分からないが、おそらく別の機能がまだ隠されているはず、でないと拍子抜けだからな。


「よし、さっさく降りて敵プレイヤーが登ってきてないか確認しよう。通信機があるお陰で、離れても意思疎通ができるのは屋内戦においてかなり強い。挟み撃ちや撤退の指示が簡単に可能だからな」


「わかりましたわ!!!!」


「ッ!! 声デカいわ!! 耳に響くやろうが!!!」


「ッ!! ぐ、グレイもデカイですわ……」


「す、すまん」


 こうして、チーム女王はビルの中に探索へ向かった。



 ―――――――――――――――――――――――――




「さて、戦闘に入る前にビルの詳細について語っておこう。


 このひと際デカいビルの名は『東京スカイタワーver3.1』

 

 実際に現実の東京にあるビルをモチーフにしている。これはスポンサーの関係で、MDO内に現実のビルを使ってみようと話になったのだ。ネーミングセンスがクソという話はまた今度にしよう。

 通称スカイタワーの高さは850m。階数は210階。上から見ると円型になっている超高層ビルである。数十年前まではドバイの「ブルジュ・ハリファ」が世界一高いビルだったが、ついに日本が超えた。まあすぐに抜かされたのだが。

 1階から100階までが住宅、101階から155階までホテル、156階から170階が複合施設、それより上は機械室や研究室になっているが、200階だけは辺りが見渡せる展望台になっている。



 おわかりいただけたであろうか。


 そう、MDOのスカイタワーは200のである。キレイに吹き飛んでいた。本当だったら建設者が涙目だが、戦争中という設定なので変更した結果、屋上が200階の展望台になって、グレイ達がそこに偶々テレポートされてゲーム開始された。


 ついでにエレベーターも壊れている設定なので、ここで戦闘を行う場合は階段かエスカレーター(故障中)を利用しなければならない。まあ大変めんどくさいフィールドだ。おそらく運営は、ここで戦闘が起きることを想定していなかっただろう。ましては上まで誰かが登るなんて。


 そんなビルを屋上からチーム女王が二手に分けて下り、下から複数のチームが登っている。


 ここからどんな戦闘が始まるのか、楽しみでしかない――


 ――by DJカラス (第一回デウス杯MDO配信より引用) 」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る