第23話 MDO配信Part3
「フルダイブ対応小型機体『トレイス』は、現実世界の魂を仮想空間に
なぜ魂を解析することに成功したのか、という話は脳波や精神の関係でとても難しく長くなるので今回説明は省きます。ご了承ください(´・ω・`) 」
「これは理解するのに何十回と説明を受けて猛勉強してやっとってレベルだ。人間の魂は実在して、それを凄い学者がゲームに利用したって認識で大丈夫だぞ」
カラスが苦笑いする。彼が一人前のトレイスゲーム実況者となるために努力した苦しい過去を思い出したのだろう。
『すげー』『よく分からんが凄いことは理解した』『俺も論文を見たがさっぱり分からん』『ほとんどのプレイヤーは理解してないから安心しろ』
「では説明を続けます。トレイスした後の現実の身体は魂が抜けた状態……いわゆる睡眠状態に近い状態まで身体機能を失います。その代わり、仮想空間、いわゆる電脳世界で自身の魂情報を元に
ちなみに、アバターを自分に似せて作成できるのは魂が身体の情報を記憶しているからです。
そしてこの『魂が身体の情報を記憶している』ことがトレイスの最大な特徴となります。
トレイスから読み取った魂を利用して仮想空間で作成したアバターは『現実世界と同じ身体能力』を保持しており、そうなると当然、思考力や筋力なども現実世界と同じになります。しかし、それでは現実と感覚は変わらず、ゲームならではの新感覚や未知の楽しみが無くなってしまう。
そこで『トレイス開発者』は、誰でもトレイスすると一定水準以上の身体能力を保持させる機能を取り付けました。これにより、誰でも世界記録以上の能力を引き出せる身体能力を持ったアバターになることが可能になったのです」
「つまり、誰でも100メートルを世界記録以上で走ることができて、無尽蔵なスタミナを得たし、筋肉も見た目に反してバッキバキってわけ。そんな身体をゲーム内で自由に使えるってことだから、そりゃ『トレイス』は大人気なわけよ」
「はい、誰でもスーパーマンです(^^)
……ですが、誰でも最高の身体能力を秘めているだけであり、それを引き出すことは個人の努力次第なのです。
有名なトレイスゲームプレイヤーが『いきなり翼を授けられた人間が空を飛べと言われているようだ』と名言しているくらいですから。
よって、トレイスを始める初心者は、この魅力たっぷりアバターを最大限まで使いこなすことから始めないといけません。普段は知らない筋肉の使い方を扱うのは少し難しいです。特に現実とギャップが大きい方ほど難しいと言えるでしょう。しかし、必ず誰しも匠に操作することは可能になりますので、皆さん頑張ってください!!」
サクラがトレイスを挫折した視聴者にむけてエールを送る。その笑顔に心を打てれて、再びトレイスに挑戦したプレイヤーは計り知れない。
「俺も実況者としてまだまだ未熟だが、一生懸命にアバターを使いこなせるよう努力しているぜ。詳しくは俺のチャンネルで説明動画あるから、ぜひ拝見してくれ」
『全力で疾走するの気持ちいいぞ』『挫折してたけど頑張る』『運動オンチの俺にも希望があるってことか』『ぜんぜんある頑張れ』『しっかり宣伝を忘れない実況者の鏡』
「しかし、勘違いしてはいけないことが一つ。トレイスにより、高性能な身体能力を得ても、高度な技術を得ることはありません。例えば、ボクシング選手並みの身体能力はあっても、ボクシング選手に勝つとはできないということです。
ですが、技術を手に入れることはなくとも元々記憶していた技術を失うことはありません。『身体に染み付いた高度な技術すらも読み取る』ということです。つまり『高度な戦闘技術を記憶したアバターに最高の身体能力を与える』ことは可能なのです。
より詳しく説明すると、アバターは現実の記憶を保持しているため、現実で磨いた技術も記憶しており、最高の身体能力を得たまま高度な技術を扱うことが出来るようになります」
「まあもっと分かりやすく噛み砕くと、
技術は上手くても歳で引退したプロサッカー選手がトレイスすれば、全盛期どころかそれ以上の高性能な身体能力を持ったプロサッカー選手に生まれ変われるってことだ。技術は持ったままで最強の身体だけ手に入ったってことだからだな」
「そうですね。今回の実例でいうと、獄炎寺選手がカイナ選手に使用した体術です。お互いの身体能力や魔法など(通称『内の力』)は同じゲームとして公平に与えられていることに対し、現実世界の技術や能力(通称『外の力』)はスタートから不公平に与えられています。
一見、公平条件でゲームをプレイしているようで、実はスタートから不公平だというわけです。まぁですが、これに関して言えば『現実で努力した者の成果』であり『不条理に奪われるものではない』という肯定意見が多数ですので、多くのトレイスプレイヤーは認めているのが現状です」
「それが嫌ならお前も現実で何かの技術を磨けって話だもんな」
『間違いない』『文句いうなら努力しろ』『しかしゲームに作用しないことが多いけどな』『ダメージは調整されるしねぇ』『スキルで身につくことも多いし』
この通り、外の力に関して批判は多くなかった。あまりゲームに作用しないことや、ゲーム内スキルで補うことが可能なパターンが多いからだ。
「しかし、反対に認められていない、いや、世間が認めるわけにはいかないトレイスの機能もあります。それが『
とうとう、サクラが一番重大な事を説明する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます