第20話 最上級火魔法
「ほぉ、我が弟を倒したか。さすがは『閃光』。相方も悪くない動きで少々苦戦をしいられたぞ」
獄炎寺が岩山の上から私たちを見下ろしながら褒め称える。どこまでも上から目線で気に入らない。
「安心して、次はあんたの番だから。こっからは簡単に倒せると思わないで」
「ハッハッハッハッ、強い女に守られて幸せだな」
「くッ……うるせー! 羨ましいかコノヤロー!!」
獄炎寺は、いやみったらしくカイナに向けて発言した。
やばい、本当に殺したい。言うなら私に言え。
「男の闘いに魔を刺すな……と言いたいところだが、そうは言ってられないか」
炎将寺は手を私達に向けるのではなく、空にかざした。たぶん、支援物資から手に入れた最強魔法とやらを使うと予想する。武器のほうは弟が持っていたから、魔法は兄貴なんだろう。
おそらく残りHPが少ないから完全に決めにきたか。
私もカイナもHPが少ないが、この魔法を凌いだら勝ちだと思われる。
こっちは二人いるんだ、慌てる必要はないし、しっかり人数有利のセオリーを守っていけば強敵と言えど大丈夫なはずだ。
「テル、勝つためといえ禁忌はダメだぞ?」
「……分かってる」
ちょっとだけ良心が痛む。
大丈夫、さっきは言われる前に使ったから約束は破ってない、うん。
そして、ついに獄炎寺が動きだした。
「さて、最後に花火を咲かせようではないか!! ここで簡単に死んでは面白くないからな!!!」
獄炎寺が思い切りよく叫ぶと同時に、天に伸ばした腕から中心に魔法陣が展開される。
なにかヤバそう!
「カイナ、今のうちに魔法を打って!!」
「よし、悪いな獄炎寺!! 本当は魔法を受けきって男の勝負といきたかったがテルには逆らえないんだ!
カイナが放った電撃が空を裂き、まっすぐに突き進んで獄炎寺に衝突した。
「やったか!?」
「あー、テルさん、そのフラグは立てちゃだめだって」
カイナの宣言どおり、獄炎寺はトニトルスを受けても姿勢を崩さずに魔法陣の展開を続けていた。
「は!? 無敵なの!?」
「もしくはダメージは入るけどノックバックしない……とか」
「なら……
火の球を放出するが、獄炎寺に当たるだけ当たって特に反応は起きない。
これは……魔法を撃たれてしまう。
「何をしても無駄だ!! 今の私に攻撃なんぞしても止まりはしない!」
獄炎寺はニヤッと笑う。
気づけば、あいつは神々しく燃え盛る巨大な炎玉を創り出していた。
「これで終わりだぁぁぁ!!」
獄炎寺は、私達がいる方向にむけ手を振り下ろした。
「
太陽のごとく熱く燃える炎の塊が、上空から墜ちてきた。
魔法を放つと同時に、獄炎寺は後ろに倒れ光の粒子と化した。どうやらさっきの魔法のダメージはちゃんと入っていたらしい。まともに戦って薄い勝機を狙うなら同時撃ちでも私達を倒すことを狙ったということか。
「めんどくさいことしてくれたな!!」
カイナが今は亡き獄炎寺に向けて叫ぶ。その気持ちには同感だ。
「どうする!? このままじゃ二人まとめて死ぬよ??」
「ああ、分かってる、なんだ、なんかないのか」
いくら火を相殺するといえどアクアは通用しないはず。かといって今からでは逃げ切れないほど大きい炎球だし、さらに、ここがちょうどクレーターのような低い位置だから壁を登らないといけないので、なおさら時間が足りない。
仮に逃げ切れても、ただ墜ちて終わりと思えない。巨大な爆発とか起こしそう……。
「ん……あれは」
何かないか辺りを探っていたカイナが首をかしげる。
「そうだ、それで避けられるはず!」
カイナは私の手を掴み、そのまま一直線にどこかへ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます