第17話 バーニング兄弟


 

「貴様ぁ!! 名乗る前に攻撃なんて卑怯だぞ!!!」


「こんな暑い場所でもっと暑苦しい奴らが来て、こちとら大迷惑なんだよ!!!」


 俺らがさっきまでいた岩山の頂上で二人が堂々と立っている。あ、1人は痙攣してるが。

 よりによって、ここで一番会いたくないプレイヤーと遭遇してしまった。こころなしか気温が10度くらい上がった気がする。くそ、まじで早く去ってほしい。


「あー、痺れた。さすがは我がライバル。敵に容赦なく攻撃し、確実に勝利を掴む男よ。これでこそ戦い甲斐があるってものだ」


「お前、誰にでもライバルって言ってるだろ……」


 なぜか勝手にライバル扱いされている。まあ、こいつら兄弟に会うのは初めてじゃないが。


「私と会った全ての強者はライバルであり戦友である!!!」


 ほらな、一体何人いるのか考えるだけ無駄なんだろう。というかライバルどころか戦友にもなってるし。


「ふむ。改めて名を言わせてもらおう。でないと戦うことに気が引いてしまうからな。私の名は獄炎寺!!!」


「俺は炎将寺!!!」


「「二人合わせて、バーニング兄弟!!!!」」


 あー、二人の後ろでギラギラと輝く太陽までも共鳴してさらに燃えているようだ。ほんとに燃えてHPがゼロになればいいのに。


「よし、兄貴!! さっそく倒そうよ! こっちには新兵器があるんだから!!」


「おいおい、慌てるな弟よ。そういうものは最後に派手に使うべきだからな」


 新兵器……そうか、なにもおかしい話じゃない。ここが絶好の支援物資を要請できる場所なら、既にこいつらが呼んでいる可能性がある。まずい、少し不利になるか。


 すると、遠くから戦闘機のプロペラ音が聞こえてくる。支援物資を届けにきたんだ。


「ほう、やはり呼んでいたか。わるいが、君たちに譲るわけにはいかない。ここで私たちバーニング兄弟の燃料となってもらおうか!!!!」


 獄炎寺が俺に魔法を打とうと腕を上げる。


 普通の敵なら簡単に事が進む奇襲作戦。どちらかに注意を惹かせ、片方が隠れて先手を打つ。俺とテルの得意技。しかしこいつには通じないだろう。このバーニング兄弟の兄は――


「が、先に燃えるのは君からだ、アーテル!! Ignis火よ!!!」


「ちッ!」


 咄嗟に横へステップを切りテルは避けることが出来た。

 後方から奇襲を仕掛けようと、俺らの会話に入らず気配を消して回り込んでいたのだ。しかし、獄炎寺は意外とかなり頭が切れる頭脳派だった。しっかり俺とアーテルの名前を覚えているし。


「君らカイナ&アーテルと戦った前回の熱きバトルを忘れてはいない。しっかりと顔も名前も雰囲気も覚えているさ」


「さすが兄貴っす!! こいつの相手は俺がやるっす!!!」


 弟の炎将寺がテルに向かって走っていく。おそらく、俺ら二人を引き剥がしてワン・オン・ワンで戦うように仕向けたか。ぶっちゃけやりづらい、なにが正々堂々だよ……。


「さて、君の相手は私なわけだが、文句はあるかな」


「いや文句しかねぇよ。なんで『相手にとって不足なし!!』とか青春っぽいことを期待してんだよ。お前らが来なかったら支援物資を手に入れてるのに」


「そうか……」


 なんか少し残念な顔をして凹んでいる。あー、ほんとやりづらい。


「はぁ……。でも戦えることは楽しいさ」


 これは本心だ。前回別のゲームで戦った時に感じた。悔しいけど、。だからこそ、自分を強くするために戦って成長したいと思う。今ならどこかの戦闘民族の気持ちが理解できる。


「ほう……それは、私も楽しみになってきた」


 獄炎寺の雰囲気が変わる。相変わらずオーラは燃えているが、さっきより静かに燃えている、気がする。


 すると、魔法を放つ構えじゃなく、を始めた。


「うそだろ……。ここ、魔法ゲームの戦場だぞ?」


「だから、これで私は闘う」


 なんだこいつ、訳がわからない。前回闘ったゲームは銃ゲーだったけど、普通に銃で闘ってきたぞ。


「ではいくぞ!!! 参る!!!」


 獄炎寺は、全速力で岩山から駆け下りて俺に向かってきた。

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