第13話 ターニングポイント
「めっちゃ支援物資ほしいぃぃぃぃ!!」
なに最強武器・最強魔法って!!
そんなの男心をくすぐるに決まってるじゃないか!!!
きっと参加プレイヤーの12割が興奮してるね、うん
「12割って馬鹿なの?」
おっと、興奮のあまり心の声が口に出ていたようだ。ステイクールだカイナ、君なら冷静にいられるだろう?
「興奮するのはいいけど、冷静にならないと死ぬから」
「そんなテルさんも、最強武器、欲しいくせに。素直じゃないんだから~」
「うわ、すっごいムカつく」
テルがゴミを見る目で睨んできた。いいねいいね、こんなことでメンタルが折れる俺じゃないぜ?
まあそんな茶番は置いといて、支援物資は真面目に取りに行きたい代物だ。必ず有利になるし、逆に相手が持っていると不利になる可能性が高い。しかし問題点はメールにあった「相手に位置がバレる」ということだ。これが本当なら、かなりデメリットが大きい。
じっと俺を見つめていたテルが呆れてため息をつく。
「はぁ。。。まず支援物資ってどうやってもらえるの?」
「そこだな……よくあるのは空中から降ってくるパターンだが……ん?」
支援物資を手に入れるか悩んでいると、どこからか聞き覚えのある音が聞こえてくる。
パララララララララ
「この音って……」
パラララララパララララ
「ああ、間違いない」
パララララララララパララララララララ
「戦闘機だ……ッ!!」
森の木々のはるか上空、1機の戦闘機が風を吹き荒らしながら駆け抜ける。その風の影響で周囲の樹や枝が激しく揺れ、木の葉や小枝が空中を舞う。
敵からの空襲を少しは考えたが、おそらくこのタイミングで戦闘機が現れたということは……。
「支援物資って、たぶん戦闘機で上空から落とすんだろうね」
テルが考えてたことを言葉にしてくれた。それを確認するために戦闘機が来た方向と去った方向を咄嗟に目視する。
どこだ……どこにあるはずだ。探せ! この世の全てをそこに置いてき――
「あった。カイナ、南南西の方角、かなり遠くだけど何か落ちてる」
南南西ってことは戦闘機が向かってきた方角か。なら既に物資を落として来たわけだ。しかし……これはなかなかに危険行為だな。位置がバレることは間違いないし、さらには遠くから敵を集める危険性もある。そこにプレイヤーがいることが把握され、かつ支援物資は奪うことが出来るから自分が呼ばなくても強力な魔法か武器を手に入れられるかもしれないからだ。あわよくば、そのまま優勝できるくらいリソースが整うかもしれない。
「さすがに、この森で支援物資を落とすのはやめとく?」
テルが支援物資から得られるメリットよりデメリットを深く考えた。正直、その判断は間違ってない。この森の利点は自分の身を隠しながら戦闘をしたり探索をしたりすることだが、位置がバレるとなると、その利点が消える。さらに言えば集まってきた敵の位置が分からないので不利にしかならないだろう。
だからだろうか、周囲で支援物資を要請してるプレイヤーがいないので戦闘機は先程の1機の以外にまったくやってこない。おそらく戦闘機がたまたまこの上空を通っただけで、別のエリアでは他にも支援物資を要請しているプレイヤーはいるだろうが。さすがは世界のトッププレイヤーだ、みんな判断が慎重で正しい。
「テルの言う通り、今はパスしよう。でも必ず要請はする、これを手にしないと終盤で負ける気がするんだ」
「そうね。それは私も賛成」
よし、これで支援物資のことは考えることを辞めよう。戦場で思考の切り替えは大事だ。
さて、不覚にも支援物資に興奮してしまったが、まずは支援国のメールから情報を整理するか。
「そういえば、残り人数が表示されていたな。たしか50人未満だったはず」
するとテルがデバイスを操作してメールを再確認する。さすがアーテルさん、俺の嫁できるわー。
「きも、いっぺん死んで」
「え? また声に出てた?」
「顔がニュウドウカジカにそっくりだったから」
「あ、知ってる、おっさんみたいな魚でしょ……え、そんな酷かった?」
「48人だった、半数近く減ってる。まあゲーム開始して、それぞれのプレイヤーが1回ずつ戦闘したらそうなるから妥当だね」
華麗に無視されてテルが冷静に分析した。そういうところも良きだ、うん。
「てことは、これから会う敵は1回は戦闘に勝利した強敵ってわけか。魔法の使い方とかMDOの戦い方をより理解しないといけないな」
次に敵と会う前に、持ち物を把握したうえで、しっかり戦略を練って戦っていきたいところだ。
「マップも配布されてた。自分達が踏み入れた位置しか表示されないって書いてあったけど、そのとおりになってるね。全体図は分かるけど、何があるのか暗くてよく見えない状態。見た感じこの森林地帯は島の東に位置して、上から7割ほどは開拓してるから、これ以上の探索はいらないかも」
テルがマップを見ながら説明する。これは俺も見ないと把握しきれないのでデバイスを起動してマップを開く。
「そして俺らは森林地帯の北側にいるな……。さっき少し見えた砂漠が北にあったから、島の北は砂漠が中心のエリアとみて間違いない」
砂漠だと見渡しが良さそうで相手の位置が把握しやすそうだ。さらに砂で足場が悪いとしたら、遠くから敵が近づいてくることも少ない無いだろう。ということは支援物資を要請しやすいということだ。
「どうする?」
この質問は「砂漠地帯に移動するか、ここに留まるか」という問いだ。
その答えは既に決まっていた。
「もちろん、北に上って砂漠地帯に行こう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます