第7話 MDO配信Part1


「いやー、さっそく面白い戦闘が観れたぜ!」


「さすがアーテル選手ですね~(^.^)」


 MDO第一回デウス杯の中継実況をしている『カラス』と『サクラ』がつい数分前に行われた開幕初の戦闘に興奮を隠しきれず感嘆の声をあげる。

 後方のパネルで流れている視聴者のコメントも多種多様な声で賑わっていた。


『いきなり高レベルな戦闘』『gg』『アーテルたん最高』『カイナさっさと助けろやカス』『火の鉤爪強すぎて草』『早く遊びたい』



「速攻で奇襲を仕掛けたトミー選手も決して悪い動きじゃなかったが……。やはりカイナ選手を確認する前にIgnisを打ったことが悪手だったかもな」


「でもあれはアーテル選手のような敏捷型の人でなければ確実に当たった距離だったと思います。もしあそこでカイナ選手とアーテル選手が逆の位置にいれば勝敗はほぼ入れ替わっていたと思いますよ^^;」


 二人の実況者が戦闘の事後解説をしていた。初めてVR戦闘ゲームに触れる方や戦闘に疎い方に向けてもしっかり説明をするあたり、場数を踏んだ実況者ならではの会話だ。


「Aquaがヒットした方向が大樹ってもの悪かったな。おそらく気づいた方も多いだろうが、あの木の中にドロップしていた鉤爪とレア魔法でアーテル選手の勝機が視えたからな」


「はい、まさかドロップ品が大樹の中にあるとは……。つまりドロップ品は何かに隠されている可能性が高いですね。箱の中や洞窟内、建物内などに」


「そうだな。そして例の大樹はダメージを与えないと壊れないオブジェクトだったんだろう。本来は魔法や武器で破壊する物だったとか」


「その可能性は高いですね……。お、ここで運営から連絡が……ふむふむ……なるほど」


 サクラがスタッフから運営からのメッセージを受け取り読み進めていく。


『お、さっそく情報解禁か』『遅すぎ』『はよ言って』『マジで謎が多すぎる』


「まあまあみなさん落ち着いてください。いま貰った情報は戦場の全体マップと基本魔法の説明です!」


「おー、それは嬉しいな! さっそくモニターに展開するか……よっと」


 カラスの指示により全体図が公開された。


 100人のプレイヤーが戦っている戦場は一つの島だった。

 島の区域は大きくわけて5つに分類される。


 1 森林地帯(エリア東)

 →木々が生い茂る森林地帯。主に回復系がドロップ。視界が悪く戦闘は起きにくいので、遠距離戦は難しいだろう。


 2 荒野地帯(エリア西)

 →砂漠や岩肌が剥き出しの崖地がある。しかし高低差があり、見渡しが良いようで悪い。主に火系統の魔法がドロップ。


 3 大都市(エリア南)

 → 廃墟都市。昔は栄えていたであろうが今は人が住めないほど荒れているようだ。地下や家はほとんど壊れている。高速道路は見渡しがいいようだ。主に雷系統の魔法がドロップ。


 4 湿地地帯(エリア北)

 → 水辺がある地帯。川があり沼があるため足が取られるので走りにくい。ドロップは水系統の魔法。


 5 ???(中央)

 →エリア中央にある立ち入り禁止区域。誰も通ることは出来ない。



「なるほど……なかなか面白そうな島になっているな。さきほどアーテル選手の戦闘があった場所は森林エリアだろう」


「戦闘でダメージを負った後に回復魔法がドロップしやすいエリアにいるのは運がいいですね。ここから準備を整えて戦えていきそうです(*´ω`*)」


「では次に基本魔法の情報だ」


「はい、魔法は次のとおりです」


 サクラの合図によりモニターが地図から説明文に代わり表示される。




 Aqua水よ

 →水の魔法。水の球を生成して放出する。速度は遅いが当たると対象を弾き飛ばす。火の魔法に当たると火を消滅させる。


 Ignis火よ

 →火の魔法。火の球を生成して放出する。威力が高く速度も速い。しかし水の魔法で消滅するので注意が必要。


 Tonitrus雷よ

 →雷の魔法。魔法陣から雷撃を放出。かなり速度が速く、当たるとスタン効果(一時的に行動が出来ない状態)を付与する。しかし威力は低い。水の魔法に当てると、その魔法にスタン効果を付与する。


 refec癒しよ

 →回復の魔法。60秒間にわたりHPゲージを回復していく。しかし対象に触れ続けるか動作を停止しないと効果が発動しない。


 *魔法は使用回数が決まっています。

 *ゲーム開始時に上記の魔法から2種が手待ちに加わります。しかし『refec』は確率が低めで設定されています。

 *HPが0になり死亡すると手持ちの魔法がドロップ品として場に残ります。





 表示された字をみてカラスが呟く。


「なるほど……水の魔法が当てづらい代わりに様々な効果を持っている印象だな」


「はい、意外とAquaの使い道で勝敗が決まるかもしれないですね٩( 'ω' )و 」


「回復魔法は戦闘中だと使うのが難しそうだ。止まらないといけないし触れ続けないといけないってのはデメリットが大きい」


「つまり戦闘中は回復することもされることも無いから短期決戦が多そうですね」


『ヒールが難しいゲームか』『これは頭を使う』『考えず打つと魔法が無くなる』『頭脳戦に期待』


 運営からの情報を読み切ったサクラが視聴者に向けて発言する。


「これから新しい情報が入り次第に皆様にお届けします。今の情報はメニューからいつでも開けますので随時確認ください。また、それぞれ中継を観たいプレイヤーの名前をタップすればカメラが切り替わりますので、それぞれ気になるプレイヤーを観てお楽しみ下さい。では、実況に戻りましょう( ´ ▽ ` )」


「お! さっそく次の戦闘が始まったらしいぞ!」


 こうして、実況席では視聴者も共にMDOを楽しんでいた。



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