第6話 情報整理

「まずは魔法から情報整理しよ」


 テルがデバイスを操作しながら言う。


「それがいい。まず発動の方法だけど、これは確認できた?」


「なんとなく分かったけど、私の場合は例外だと思うから一応説明が欲しい」


 たぶん、さっきおっちゃんを裂いた鉤爪のことだろう。改めて観察しようと思い視線を向けるが、気がついたらテルの手には何の武器も存在しなかった。


「おっけ。まず腕のデバイスをタッチして起動。そこの『魔法』項目から使いたい魔法を選択、そして装備を選択。するとスタートから視界の左下に存在した円の中に対象の模様ってかマークが浮き出るはずだ。今の俺の場合は『Aqua』を装備しているから雫のようなマークが円の中に存在している。さらにさっき確認したんだけど、魔法は少なくとも3種類同時に装備が可能らしい。だから追加で俺は『Ignis』とトミー兄さんからドロップした『Tonitrus』を装備している。つまり今、円の中は『雫』『火』『雷』の模様が存在してるな」


「おー、確かに。この模様の右下の数字はその魔法の使用回数か」


 テルがデバイスをいじりながら呟いた。どうやら魔法は装備してなかったらしい。


「そうだと思う。敵から奪う以外の魔法の回収方法が分かってないから無駄撃ちできなくて確認はできないけど」


「あ、それに関してはたぶん分かったからいい。後で説明する」


「さすが。なら今のとこと確認できた『Aqua』『Ignis』『Tonitrus』について整理しようか」


 さきほどテルがおっちゃんから喰らった水の球と雷の魔法、そして兄さんが外した火炎玉だ。


「ならまず『Aqua』から。これは水の球を放つ魔法。速度はそこそこ。銃より遅いけど人より速かった気がする。でもまあ『Ignis』と『Tonitrus』よりは遅いから今のところ一番遅い魔法ってことになるね」


「ああ、そうだな。そして付属効果というか追加効果としてヒット時に強烈な衝撃と反動、だろ?」


 影から反撃の機を伺うために戦場をしっかり偵察していたので、テルがAquaに当たった時の吹っ飛び方に違和感を覚えることが出来た。そこで、Aquaに吹き飛ばしに関係する追加効果が含まれているのではないかと考え、俺の手持ちのIgnisよりAquaを選択して援護射撃を計画したわけだ。結果的にAquaを選択したことが功を成してテルがトドメを刺しやすくなった。


「うん、あれは直撃したら自分の意志とは関係なく吹き飛ぶ。多少停止するように抵抗したけど無駄だったから。でもダメージは致死量では無いし、避けられないほど速くもないから……そこまで警戒しなくていいかも」


「なるほど、使いどころが難しいな……。ちなみにテル、Aquaの衝撃で木にぶつかったときってダメージは入ったの?」


「……あ、多少は入った気がする」


「なら決まりだな。Aquaは仕留める技ってよりは距離を取りたい時に当てたい魔法で、敵を何かの障害物に当てて追加ダメージを狙うことが主な目的だな」


 そう考えると使い方も分かってくる。ただ他の魔法と比べると遅いから接近して当てたいな……。もしくはさっきみたいに奇襲で有効そうだ。


「次は『Tonitrus』についてね。これは本当に速かった。Aquaとは本当に比べ物にならないくらい。たぶんそこらのFPSゲームの銃と同じかそれ以上に」


「確かにな。俺も外から見ていて速いのは感じた。そしてスタン現象が起きたのは陽動? それとも本当?」


 テルが『Tonitrus』を受ける瞬間、Aqua俺と目があったことから注意を引くためにわざと動けないフリをしたかと思ったが……。


「いや、残念ながらあれは本当だったよ。まったく動けないわけじゃないけど、全身が痺れてまともに動けないし、魔法の発動は難しい。でもダメージはAquaの半分以下だから完全に阻害魔法とみて間違いないかな」


「そうか。まあ視界で人が確認できる位置だったら命中精度次第でほぼ当たりそうだから、さすがに威力は低めになるよな」


 これはかなり使いやすそうな魔法だから重宝するとしよう。完全にテルより俺向きな魔法だ。


「最後はIgnisだけど……。これはまだ不確定要素が多い」


「だな。速度はAquaより速いがTonitrusより遅いくらい。予想としては、ダメージは大きいと思う。他の2つの魔法が威力は大きくないからね。あとは受けてみないと分からないか」


「……いまから受けてみる?」


「ハァ、ハァ、テルの攻め魔法攻撃ならもちろん歓げ――」


「きも、冗談だし」


「ごめんなさい」


 うん、このいつも通りの感じ……悪くない!

 こうやって雰囲気を良くして緊張をほぐしていってるから相棒として素晴らしいよな!!

 少しだけ隣のクズを見るような見下した目が気になるけど大丈夫だよね!!!


「あ、そういえば、テルの炎の鉤爪について聞いてなかった。あれどうしたんだ?」


「……はぁ。あれはAquaで吹っ飛ばされて、大樹の中に貫通して入った時に拾った」


 テルが呆れてため息を吐きながら伝えた。

 どうやら敵から身を隠している間にいろいろ行動していたらしい。そう考えるとAquaを受けたのは結果的に良かったな。鉤爪はドロップ品だったようだが、始めから爪に炎がついていたのか疑問だ。

 テルが俺の疑問を感じたのか、さらに付け加えた。

「あれは鉤爪に『Flamma』って魔法を付与エンチャントした結果。あの大樹の中には『鉤爪』と『Flamma』があって、とにかく何かしないと負けだから鉤爪を装備したら、デバイスの項目に『付与』があったから……って感じ」


「おー、かなり運が良かったのか。『Flamma』はもうない?」


「使用回数は1だったから無い」


「なら、どちからと言えばレアアイテムだったかもな。たぶん『Ignis』より威力が高い炎魔法だろう。おっちゃんを数発で仕留めたことからエンチャントによって炎爪の威力も上がってそうだし。魔法系の武器もあるって考えたらさらに楽しくなってきた!」


 その理論で考えると、他の水や雷の魔法も高レアリティな上位互換が存在してそうだし、他の魔法が存在する可能性も高い。


「ならある程度の情報整理は終わりということで、ドロップ品の捜索をしつつ適当な敵を見つけて狩ろ」


 テルが話を終えたので、俺に背を向けて森の中へ歩き出した。


「とりあえず回復系を見つけたいね」






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