第5話 強者の余裕


 「テル、ナイスキル」


 首チョンパしたおっちゃんが光と共に消失した後、遠くから援護射撃をしてくれたカイナが私に近づいて声をかけた。


「ナイス援護、カイナ。でもずっと出てこない時は後で直々に殺しにいこうと考えてた」


「うーん、あそこで援護した自分を褒めてあげたい」


 カイナが腕を組んで深々と頷く。そして足元を見て何かに気がついた。


「なあ、おっちゃんの死体位置からβテスト時の時と同じ光球があるぞ」


 改めて確認すると、2つ淡い光を放った光球が浮かんでいた。2つとも青い光を浴びている。まるでポルターガイストでも起きたみたいだ。βテスト版の時は勝利した際の証明アイテムみたいなものだったが、今回はおそらくドロップ品だと考えられる。

 さっそく確かめるべく、しゃがんで光球を触ってみる。すると視界の右下にアイテムを手に入れたエフェクトが表示される。


『Aqua×1』『Tonitrus×2』


「なにを手に入れたんだ?」


「AquaとTonitrus。たぶん3発分あって、Aquaは初め私に打った1発と、さっきのカイナに邪魔された1発が減って残り1かな。完全に発動しなくても、発動意思があり少しでも展開エフェクトが見えたら数が減るってことだね」


「なるほど……なら俺は向こうの兄ちゃんの分を取ってくるよ」


 カイナが走って先ほどの死体があった場所まで戻る。

 とりあえず初戦に勝てて良かった。一番危ないのは初戦と最終戦だと個人的には考えているからだ。初戦は情報が少ないことと慣れがないことが危ない、最終戦は焦り・緊張が邪魔をする。そして正直、先程の戦闘は運がかなり味方した。その内容も含め、カイナが戻ってきたら情報整理をしながら探索するとしようか。

 何故なら、しばらく戦闘は無いんじゃないかと思うからだ。100人も参加しているバトルロワイアルで、プレイヤー同士の初期位置が近いわけがない……はずだ。さっきの二人は偶然距離が近くて、奇襲をかけるために全速で移動した結果、私たちに遭遇したと考えたい。まあ予想外の展開が起きてもおかしくないので最低限の警戒は怠らないほうが無難か。


「ただいまテル。あいつからは『Ignis』と『Tonitrus』だったよ。俺の想像したより『Ignis』の数が合わないってことは、たぶんあいつ俺らに会う道中で試し打ちしてるね」


「なるほど……。一度、情報整理しよ」


「そうだな、さっきの奇襲は危なかったけど、その分得るものは多かったからね」


 こうして、私とカイナはお互いに確認できた情報を共有して整理することにした。

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