第3話 初の戦闘



 「いけ! Ignis火よ!!」


 後方からの叫び声。私の前方にカイナがいることから敵の狙いは私だと察した。

 後ろを確認する時間も惜しい。ここは全力で横に飛ぶッ!!!


「――ッハアアァァァ!!」


 全神経を使い勢いよく横に跳ねると、さっきまで立っていた側の木に轟音を響かせながら紅い火球が炸裂した。木は原型を留めることなく砕け散り、その破片が空中に舞う。


「カイナ! 私を狙ってる!!」


 即座に反応し意図を察したカイナは近くの茂みに隠れる。敵が仲間カイナを見つけてないのに攻撃してきたバカだと仮定した場合、カイナの援護長所を活かせると考えたからだ。

 さすがにランキング上位者だからそんなことはないと思うが――


「ヒュウ~♪ やるね嬢ちゃん。完全に意表を突いたと思ったんだが……やっぱ詠唱しなくちゃいけないのがネックだな」


「おいトミー。勝手に行動したあげく仕留め残った罪はどう償うんだ? しかも仲間の位置も把握してねぇだろお前」


「そんな堅苦しいこと言うなよジョン、楽しくいこうぜ、楽しく」


 どうやらバカだったらしい。というかトミーと呼ばれる男が悪いと観える。

 どうしよう、こっちは武器がないし魔法の使い方も分からない。


「反撃しないところを見ると……どうやら魔法の使い方を知らないらしい。こいつは予習もしてこなかった、とんだ甘ちゃんみたいだな。おい、トミー、さっさとケリを着けるぞ」


「ハハッ、ジョンの言う通り、序盤にキョドってるプレイヤーを狩る作戦が上手くいったな! じゃあ遠慮なく―― Ignis《火よ》!!」


 トミーがもう一度、私にめがけて業火を放つ。魔法発動するモーションを二度目はしっかり確認できた。

 トミーが手の平をこちらに向け詠唱すると、彼の手の先に見たことのないが展開。その後、0,5秒も満たずに炎が生成され、すぐさま解き放たれた。だいたい詠唱から火球を放つまで1秒といったところか。

 しかし、速度は恐れるに足りなかった。体感速度的に銃の玉より遅い。一番近い速度は……一般道の車の速度くらいといったところか。

 つまり、避けれる速さなのでステップで躱し――


「嬢ちゃん、トミーばっか見すぎだぜ」


 ――が、不意に視界の端から現れたジョンに反応できたなかった。トミーの挙動をみて情報を集めようとした結果、ジョンへの意識を忘れてしまっていたのだ。


「チッ、触れるとセクハラで訴えるよ」


「はっ、生意気なガキだな。安心しな、俺は触れねぇよ――Aqua水よ!!」


 ジョンがゼロ距離で魔法をぶっ飛ばす。彼の手から水球が放射され私の腹に思いっきり衝突する。


「くッ……! 止まらな――」


 Aquaの予想以上の反動に踏み留まることが出来ず、水球と共に遙か後方へ弾き飛ばされた。



 その先の一際大きい大木に激突し、樹皮を貫いて私は静止した。

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