第3話 高無 海那
「うお、寒いな」
学校に行くために外に出ると、想像していた以上の冷気が押し寄せてきて思わず呻き声を上げてしまう。
昨日はゲーム漬けの1日だったので、外の気温を感じるのが久しぶりに思う。できるなら今日も部屋に篭ってニートのようゲームして寝て食べてと繰り返したいが……学生の身分にそれは許されない。無理にでも身体に鞭を打ち学校へ向かうとしよう。
とある大通りに抜け、白い息を吐きながら歩いていると、見覚えのある後ろ姿を見つける。腰まで伸ばしているが艶のある漆黒の長髪、膝までの程よい長さのスカートに防寒対策の黒タイツと首元に黒のマフラー。ついでに黒の手袋も。なんでこんなに黒が好きなのかは分からないが、そこは俺が口出すことではない。そして150cmにも満たない身長とスラリとした細い体型とくれば、だいたい予想が付くものだ。
そんな彼女が、正面上方パネルのニュースを眺めながらフラフラと歩いてる。なんとなく次に起きる事態を察したので、急いで隣に並び見守っていると想定通りに躓いたので軽く身体を支えてやった。
「よっと、危なかった。テル……じゃなかった、
すると何も自分は悪いことしてないどころか、俺が悪いかのように彼女は言い放った。
「……いるなら声かけてよ。そうしたら転んでないのに」
「えー、俺が悪いのかよ。まぁ少し見惚れていたのは事実かな」
「きも、変態、スケベ、いますぐ離れて」
「そこまで言う!?」
ああ、罵ってる彼女も可愛いなと思うのは口に出さない方が良いのだろう。その目は牛乳瓶の底みたいなメガネのせいで見えないが、きっと睨んでるに違いない。ほんとオシャレに興味がないというか人目を気にしないというか。前を歩いているギャルと比べると本当に同じJKかと疑うほどだ。
「よっ、お二人さん、おはよーう!」
「カイナおはよう! 相変わらず黒崎さんのことが好きだな」
同級生のダチから元気よく挨拶をされる。
「ばっ、そんなことねーよ(照)」
「私は嫌いだけど(怒)」
あのー、黒崎さん、そろそろ僕のメンタルが砕けそうなんですが。
「ははっ、相変わらずだな」
「じゃ、また教室でなー!」
いつもの光景を見れた友人は満足したのか、そのまま学校へ向かった。
俺たちも遅刻するわけにはいかないので、さっさと歩いていたが、そこで昨日の話題に触れる。
「昨日のMDO、どうやらβテスト版は昨夜のうちに終了してるらしい。たぶん今日あたりに新情報なり制作発表なりくると思うんだけど」
晶ちゃんはこっちを見ずに返事をする。
「まぁ、あんまり期待してないけど、もし新作が発売すればプレイするからよろしく」
つまり「新作が発売したら面白くなさそうでもその日の内にプレイするから予定は空けといてね」ということだ。まぁ何とも分からずらい誘いだが、黒崎検定1級の俺レベルまで達すれば訳なんて余裕の余裕よ。
「了解、なら発表が来たら詳しく話そうか」
それで会話は終了し、そのまま教室で授業を受けていたのだが……予想より早く「ライゲキ」からメールが届いたのだった。
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